書肆萬年床光画関係資料室

写真史や撮影技術、カメラ等について研究趣味上のメモ置き場

入門機クラス銀塩AF一眼レフシリーズのお勧め度の比較 その1「ミノルタα Sweetシリーズ」


(MINOLTA α-Sweet + MINOLTA AF ZOOM 35-70mm F4.0 + KODAK UltraMax 400)

こんな感じでやってます

EOS Kiss以外の入門機クラス銀塩AF一眼レフシリーズのお勧め度の比較を書いてみようと思います。結論からいうと裏タイトル「EOS Kissシリーズ以外が初心者にお勧めでないちょっとした理由」になり果てるのではないかと思いますが、どうか石を投げないでくださいませ。

弁解しておきますと私が一番好きな普及帯AF一眼レフはMINOLTA α Sweetシリーズですので!「好き」と「お勧め」は残念ながら違うという話です。皆さん一家言をおもちの分野と思いますので、いくつかお断りを書いておきます。

  • このお勧め度比較は「今からフィルムでの写真撮影を始めて見たい!」という若者が私のところに相談に来たら、という視点で作成しています。
  • プラ製AF一眼レフ入門機は一番新しいNikon U2PENTAX *istでも登場してから14年が経過しています(2016年現在)。14年が経過した家電はエアコンでも扇風機でもそろそろ買い換えを検討する時期ではないでしょうか。いま快調に動作していても突然故障することがありえます。見た目が美品でも使われているプラスチック製部品等の劣化も進んでいることは念頭に置いておいてください。え…と、不安になられた方。大丈夫です!だからこそのプラ製AF一眼レフなのです。
  • 各機種の入手性や店頭での状態については九州の片田舎在住という状況を考慮していただきたく。ジャンクカメラを集めるために高速やバイパスにのって近隣市町村を回るというアホな生活をしております。
  • いや、むしろ!いまこそ!中級機(プロ機・名機)であるべき!とか一万円も出せばアレが手に入る!いや中判(大判)こそが…という意見も出てくると思いますし、それぞれに納得のいくものと思いますが、私は「私がこれまでカメラを譲ってきた月の手取りが10万〜14万程度でそれでも作品を作っていきたい、その手段として写真(銀塩)を選びたい!という若者たち」が身銭を切って活動するための手段として最適なものは何か、という視点で書いておりますことをご理解ください。どこかで記事をまとめていただければ、若者たちの次のステップとして有効だと思いますのでぜひご検討ください。
    • 若者たちが写真に費やせるのは頑張って月に1万円程度、それでどれだけ最短で最良の結果を出しながら継続していけるか、と考えたことが元になっています。それで年に一回くらいは個展なり合同展に出展なり某かの展示なりができればいいな、と。月1万円×12ヶ月の予算でどれだけの活動ができるか。このあたりはまた別項で書きたいと思います(そのうち…)。
    • そんなわけで忙しくなった現在は開店休業状態ですが以前は「普及帯AF一眼レフ本体、電池、フィルム×2〜3本、標準ズームレンズ(場合によっては望遠ズームも)、その他備品一式、カメラバッグと手製簡易解説プリント等セット」で「1本目の現像(良いDPEの紹介)と作品選択までをひととおり面倒見る」という活動をしていました。そのときに準備してもらう費用は3,000円でした。こちらとしてはもちろん全くの赤字です。仲間が増やすための活動でした。フィルム代もあがって現像代も厳しくなった現状ですが、とりあえずはここを目指して行きたいと思っています。そのあたりがこのブログを始めた初期衝動なのです。

前回、EOS Kissシリーズをイチ押しと書きまして、その結論は変わらないのですが実際には程度が良いものが手元にあればα-Sweetを譲ったこともあればどうしてもNikon U2が気に入りました!というのでそれを譲ったこともあります(その一台しかもっていなかったのに!(涙))。前置きが長すぎました。では始めるとしましょう!

入門機クラス銀塩AF一眼レフシリーズのお勧め度の比較

※ 登場順は私が周回しているハードオフ・カメラ委託のあるDPEでの目撃数を参考としております。

1番手 ミノルタα Sweetシリーズ
  ファインダ最高。アキュートマットを讃えよ!
  質の良いαレンズが割安で揃う。互換レンズも格安。
  なんとケンコー・トキナーが有料の公式サポートを継続中
  ジャンクコーナー在庫数豊富
  操作性が少々独特
 × 持病のファインダ黄変・青変個体激増中
 × 電装系に不安有り


写真は銀塩αの最終機α-70。

まず、改めて記事を書くのに適当に検索したサイトを眺めていたら、思いっきり自分の過去ログだったというおおぼけをかましました(マジです)。老化は進行しているようです。過去ログにあることはそちらに任せて落ち穂拾いだけやることにします。この辺りをご覧ください。

ミノルタα‐Sweet写真入門

ミノルタα‐Sweet写真入門

○入手性・◎価格
なぜか地元九州の片田舎で掃いて捨てるほど積み上がっているSweetシリーズです。初代とS、360siがほとんどですが、たまにSweet IIもみかけます。だいたい324円〜540円ぐらいが中心でしょうか。ちなみに今日寄ったハードオフではジャンクコーナにSweet初代およびSweet IIの美品かつ標準または標準・望遠ズームセットが3,000円前後で3セットぐらいも並んでました。この入門機シリーズにKONICA MINOLTA α-70まで含むかどうかは議論の分かれるところでしょうが、そもそもα-70の実用動作品がジャンクコーナーに並ぶことはまずないのでここではおきます。むしろ並んでいたら確保して私に送ってください(真顔で)。

◎スペック・◎サポート・△操作性
シャッタースピード1/4000など完全に中級機のスペックです。フィルム写真を始めたばかりでこのスペックに不満を持ったとしたら、次はプロ機を買うしか無くなります(笑)。ただ操作性については、左肩のファンクションダイヤルを回してエリアを選び、右のジョグダイヤルで項目を選択するというやり方は抽象度が高く、搭載された機能についてだいたい想像ができる中級者以上ならともかく、現在のモードダイヤルに慣れた目から見るととっつきがたいかもしれません。初心者が直感的に操作するのは難しいと思われます。これはα Sweetのせいではないのですが、ジャンクや中古での入手を前提とするとマニュアルが付いていることは少ないので減点ポイントかと。ただ、ミノルタ製カメラについてはサポートを引き継いだケンコー・トキナーがマニュアルを公開してますので、それを知っていれば解決します。が、これを最初から知っておくのは難しいと思うので現状の目から見た評価ポイントとしてはどうしても一段さがりますね。

◎×ファインダー・◎レンズ
初めてSweetシリーズのファインダーを覗いたとき「これがダハミラー機?」と衝撃を受けた覚えがあります。目が喜ぶとはこういうことをいうのか!なんて。今のAPS-Cデジタル一眼レフの大半と比較したらこちらの方が見えがよいかもしれません。さすがのアキュートマットスクリーン!上級機ならもっとスゴいよ(この辺り↑の過去ログで暴走していますのでお暇なときにでもご一読ください)。
ただ、このファインダーが残念なことに個人的な経験としては2014年頃から劣化しているものが多く見受けられるようになりました。Sweetシリーズに限らずα全般のダハミラー採用機で、ミラーの銀蒸着の酸化に由来すると思われる黄変・青変が起こります。青変は中央部から泉を吹き出す様に起こり始め、黄変は周辺部から色づき始め、これがやがてオレンジ、茶色と濃くなり視界のほとんどを覆う様になります。こうなるとケンコー・トキナーで修理を依頼するしか無くなりますが万単位でかかります。ついにハードオフでは無く専門店のケース内の中古品でも青変が起こっているのを確認しているので、個人的には直接手にとって確認できない限りは気軽に購入できない機種になっています。無念。
レンズについては過去リリースされた全てのαマウント(αAマウント)のレンズが使えます(SONYブランドのAPS機用のレンズでは周辺がケラレますが)。また、かつてのαの隆盛と現在の低迷の帰結として、往年の銘レンズが格安で入手可能です。もちろんαレンズも玉石混淆なのですが、純正でもズームレンズに評価が高いものが多いのが嬉しいところです。良いαレンズをつけてファインダーを覗くと最高ですよ。サードパーティの標準ズームなら540円あたりから状態の良いモノが入手できます。

×電装系
不安有りと書きましたが、これSweetに限らずミノルタ後期の宿痾な気がします。電源を入れてもスイッチが入らない。または入った様に見えて1枚撮ったら巻き戻ってしまうトラブルを複数台で確認しています。これも起こってしまったらケンコー・トキナーにサポートに出すしかありません。もちろん諭吉さんコースです。

まとめ
そんなわけで第一弾、α Sweetでした。個人的には大好きなのですが、年々積極的にお勧めできなくなっているのが残念です。ファインダーの劣化はいかんともしがたく、電装系も怪しいです。いっけん正常に動作している様に見え、喜び勇んでフィルムを詰めてシャッターを切った瞬間巻き戻しが始まってしまったときの悲しみ!ケンコー・トキナーによる公式のサポート(有償)が続いているのはむしろ他に無いアドバンテージなのですが、部品の払底により修理できないことも増えているようです。MINOLTAのカメラは全体に華奢なイメージが付きまとうところがあるといいますか。

こんな感じでダラダラやっていきます。異論反論オブジェクション(古!)多々あると思いますが、twitter等でご連絡をいただければ。更新が進んだら途中で修正することもあると思いますので。なおミノルタだからこんなに長くなったのでしてNikonPENTAXはもっとあっさりやります(そもそもまとめて更新するはずが長くなりすぎました)。

「単独ムックと需要層と普及台数の関係」試論

立て続けに更新しております。色々資料を眺めているのですが、Canon EOS KissにしろMINOLTA α SweetにしろNikon Uにしろ、単独ムックの作例がどれも似たり寄ったりで、さらに言うなら2016年現在の「写真」関連の概説書もほとんど変わっていないという状況に若干寒気を感じております。

ところで、上記の一覧にPENTAXがはいっていないのはどういうことか!とお怒りの向きがありましょうが、そもそもペンタックスの普及帯AF一眼レフは単独ムックが出版されていないくさいのです(少なくとも私は見たことがない…)。

Amazonでざっと検索して MZ-7のドイツ語(!)解説書は見つかりました。144頁、なかなか気合い入っています。そもそもMZ-7を普及帯一眼レフと言って良いのかは議論のあるところでしょうか(むしろ中級機かと。MZ-3とMZ-5をどう位置づけるか、という問題になりますが。MZ-Sをシリーズの最上級機とするか番外とするか)。

Fotoguide Pentax MZ-7

Fotoguide Pentax MZ-7

そう考えるとペンタックスの各機種に単独ムックが出版されている現状からして、実はいまが黄金期と言えるのかもしれません(本当)。
ペンタックスQ WORLD―手のひらサイズのナノ一眼 (日本カメラMOOK)

ペンタックスQ WORLD―手のひらサイズのナノ一眼 (日本カメラMOOK)

単独ムックと需要層の関係

これは以前も触れたことですが、実はEOS Kissシリーズも2代目のNew EOS Kissで単独ムックは終わってるようです。

あれだけの普及台数を誇りながら需要層がそういうムックを求める層ではなかったということは言えるのかもしれません。

また、Nikon Uシリーズも最終U2の一歩手前のUsまで、MINOLTAも最終機をα-Sweet IIとするかKONICA MINOLTAのα-70迄とするかで数え方は変わりますが、やはり最終機まではムックは出ていません。

ニコンU・Us・F80の使い方

ニコンU・Us・F80の使い方

ミノルタα‐Sweet写真入門

ミノルタα‐Sweet写真入門

まぁ、そもそも中級機やプロ機でもこの当時単独ムックがどれくらい編まれていたのかという問題はあるのですが。しかし、普及帯に限るとしてもEOS Kiss Digital登場前後からの怒濤のムックリリース攻勢と比較すると好対照を成すように思えますね。ここはカメラというものの位置づけがどういうものであったのか再確認して良いポイントかもしれません。

そう考えると内容については置くとしてもデジタル一眼レフになってからのムックの出版数はすごいことです。

ハードオフのジャンク棚からのぞきみた普及の実情

普及帯AF一眼レフのなかで九州の片田舎のハードオフのジャンク棚で層をなしているうち一番数が多いのが初期EOS Kiss三部作。ほぼ同数で競り合っているのがMINOLTA α Sweet初代とそのバリエーション(S,360si)です。ほとんど見ることが無いのがPENTAX 二桁シリーズでそしてまず見ないのがNikon Uです(かえって三桁シリーズのほうがみるかも)。

ただし、Nikon Uに関しては行きつけのDPEの委託コーナーには複数台あるので、購入層がメーカーの思惑通りのファミリー層とはならず、当時からある程度"分かっている"ニコン党へ流れついたとは言えるのかもしれません。そもそもこのあたりの機種はスペック的には完全な中級機であり、海外ではシリーズ名から違って中級機として正当なナンバリングがされていたりするのです。

結局のところ、ペンタックスMZ二桁シリーズは実際どの層にどれくらい売れたのでしょうね。ペンタックスのMZシリーズはプラ製のピニオンギアが破断してミラーアップしてしまうという持病があるのでそれで動作品が減っているというのはあるかもしれませんがいくらなんでも…と思います。普及帯AF一眼レフのなかでこの手の持病としては最近益々手の付けられない状況になりつつあるMINOLTA αシリーズのダハミラー搭載機のペンタダハミラーの銀蒸着の劣化問題ですかね。

というわけで次はそのあたりを踏まえたEOS Kiss以外の普及帯AF一眼レフシリーズのお勧め度を書いてみようかなと思っております。

いまからフィルムで撮ってみたいという人にEOS Kiss シリーズ(具体的にはIII / III L)をお勧めする5の理由(16.08.14版)

いまからフィルムでの写真撮影をしてみたいと思い立った方に相談を受けることがあるのですが、2016年8月14日現在で私が自信を持ってお勧めする一番のカメラはCanon EOS Kissシリーズです。

キヤノン一眼レフのすべて (Gakken Camera Mook)

キヤノン一眼レフのすべて (Gakken Camera Mook)

値段と入手性の容易さから特にお勧めしたいのはIII / III Lですがもちろんシリーズのどれでもかまいません。レンズは標準ズームであれば純正・サードパーティーレンズのどれでも良い結果が得られます。


写真はEOS Kiss III LとSIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6 MACROの組み合わせですが、このハードオフジャンクコーナーで捨て値で転がっているこの組み合わせこそが最も安価に、短時間で、確実に、素晴らしい結果が手に入る組み合わせです。これでフィルム10本を撮影(240〜360ショット)して10枚を選べばちょっとした展示ができます。

写真展を開く!―「写真の学校」

写真展を開く!―「写真の学校」

デジタルカメラの時代になってもEOS Kiss Digitalとして確固たる立ち位置と思想、デザインを引き継いだモデルが高い人気を誇っています。

と同時に、"玄人"な方々からは軽く見られているところがあるのも事実。そして素晴らしいカメラであるにもかかわらず、決してそのポテンシャルを充分に発揮した使われ方をしていない場合が往々にしてあるというのも確かなところでしょう。ちょっと分かってくると何故か少し持っているのが恥ずかしくなってしまう…そんなところがあるかもしれません。デジタル時代になってもこういうところはあまり変わってませんね。

銀塩EOS Kissは初代が1996年の登場で、お勧めする三代目EOS Kiss IIIが1999年、III Lが2001年とまさしくフィルム最盛期の機種であり、フィルムカメラとしては究極の完成形のひとつです。私にとってはついこないだのことなのですが、今からフィルムで撮ってみたい!と思い立つ様な若い方にとってはひょっとすると物心つく前ということなのかも知れません(流石に生まれる前ってことはない…ですよね?)。しかし、この完成形といっていいようなカメラ達も決して当時から今まで正統な評価を得てきたとは言えないところがあります(メーカーもそのような売り方はしていなかったのです)。

これらのEOS Kissの本来的な価値を引き出し、傑作を撮ることができるのはひょっとしたら当時の状況を知らずまっさらな気持ちで新しく手にとることができる皆さんなのかも知れないと、そういう風に思うところがあるのです。

EOS Kiss シリーズがお勧めな理由 その1

まずなんと言っても安いことです。ハードオフのジャンクコーナーで、程度の良いものがワンコイン以内で手に入ります。お勧めのIII Lでもグリップのべたつき等があるなら324円から美品でも540円くらいであります。108円も充分狙えるでしょう。

対応レンズも28-90mm前後の標準ズームが純正・サードパーティ(SIGMAならマクロ付きも!)がこれまたワンコインで入手できます。

20年近く前の電子機器ですから、残念ながらどんなに状態が良くとも突然に不調になることはありますし、デジタルカメラがそうであるように電子化されたカメラは初心者がトラブルに対応することは難しいです。しかし、レンズでもカメラ本体でもまったく同一機種を即入手できるのはかなり心強いことでは無いでしょうか。ハードオフのジャンクコーナーでそのまま朽ちていくだけだったところが一瞬でも通電して撮影に使ってもらえたらなら、感謝こそすれ恨まれることは無いでしょう。ガンガン使ってあげましょう。

なお、ヤフオク等の使われなくなったユーザーからのセット出品ならジャンク単体より安いこともあり狙い目で、上手くいけば標準・望遠ズームレンズセット、カメラ本体、ストラップ、付属品・説明書類、カメラバックなどついて3,000円以内で手に入ることがありますが、動作確認できているかだけはチェックした方が良いでしょう。

最初はジャンクのカメラとレンズ本体だけでも充分です。もちろん、今が格安とはいえそれぞれほんの少し前まで数万円で売られていたことを忘れないようにしましょう。費用対効果は抜群です!108円のジャンクカメラではなく、5万円のカメラと2万円のレンズを持っていると胸をはりましょう。それでも安すぎる位なんですから!

その2

惜しみない機能てんこ盛りで何でも撮れる傑作機であることです。EOS Kissの源流となったEOS 1000(1990年)は一眼レフからステータスを奪い去ったカメラと言われます。そこから代を重ねて10年近くを経たIII/III Lで撮れない写真はありませんシャッタースピードは1/2000とまずまずのものでAF測距点も7点とスペックは中級機です。あとはそのスペックを引き出せるかどうか、あなたの腕と発想にかかっています!

その3

とても軽く、小さく、動作音が本当に静かなことです。プラスチック筐体のメリットで、III / III Lでなんとたったの355gしかありません。レンズをつけても本当に軽い。それでいて決して質感は安っぽくありません。デザインの流行からすれば一時は野暮ったく見えたのは事実ですが、そろそろ一周回って充分にかっこよく/可愛く見える様に思います。とくに優しいシャッター音を聞くとリラックスして静かな気持ちで被写体に向かえる様に思えます(個人差があります)…というのは冗談ですが。でかいカメラでバシャバシャやるというのは、撮っている本人にとって気持ちが良いというのは分からなくは無いのですが自己満足のきらいもあり、今の時代だからこそ使いたい優しいカメラに思えるのです。

その4

使い方が現在のデジタル一眼レフといっしょなので、デジタル一眼レフを使ったことがある人はなんの違和感も無くすぐに銀塩EOS Kissを使いこなすことができます。 もちろんこれは歴史的経緯が逆な訳ですが、この場合そこは重要でないので突っ込みはご容赦くださいね。

デジタル一眼レフの隆盛とパラレルな後期5、7、Liteは背面に情報ディスプレイ等が追加されたりしてマニュアル無しでは使いにくい(余計な情報に気を散らされる)ところがあるので、そのあたりもIIIまたはIII Lをお勧めする理由ではあります。

その5

そして、フィルムでの撮影を楽しむうえで私がその入り口として普及帯AF一眼レフをお勧めする一番の理由がこれなのですが「35mmのネガフィルム(135フィルム)で適正露出で撮影された写真がどのような描写になるのか」を確実に教えてくれることです。もちろん現代のレンズを使うことが前提ですが、EFマウント(Canon EOSシリーズのマウントの呼称です)のレンズは全て現代レンズなのでここを気にする必要が無いというのもあります。

もちろん、将来的に機械式/電子式のMFカメラやオールドレンズに進むこともあるでしょう。個々人の肉体による「撮影」という身体的行為はこれを使えば解決!という絶対の答えを決めさせませんから。しかし、それらのオールドレンズの描写が、果たしてそのレンズの描写として"正しい"のかどうか(モノクロフィルム時代のオールドレンズをカラーネガで使うと、かなり濁った色味になることが往々にしてあるのです)を判断するためにも、まずは現代のネガフィルムでの最新の正しい描写を知っておくことで自分の中に確固たる基準を整えることができます。

この入り口部分を間違えると、高度な光学と化学の結晶である銀塩写真であるにもかかわらず「フィルムは思った様に写らないから面白い!」というちょっと困った袋小路に入ってしまうことになりかねません。正直、その自己流路線はあまり幸せな方向にすすまないように思うのです。

終わりに

とりあえずEOS Kissシリーズをプッシュする理由を並べてみました。具体的な入手の仕方や使い方、そして肝心の写真とは何かと現在の写真をとりまく環境についての問題(と私が考えるもの)についてはまた項をあらためて書いていきたいと思います。

その前に、なぜどれもだいたい同じスペックを獲得していてそれぞれに個性的かつ魅力的な存在である他社の普及帯AF一眼レフをお勧めしないのかについてをちょっと書いておきたいと思います。私自身、このクラスで一番好きなのはMINOLTA α Sweetシリーズなのですけれども登場から20年が経ち、シリーズごとに色々な問題が出来しています。

(ま、お薦めするにしてもKissやせいぜいα Sweetを除けば単純に球数が違うというのが確かなのですけれども。

SIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6 MACRO(EF) 分解

先日婿に出ることが決まったので動作確認に持ち出したCanon EOS Kiss III L+SIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6ですが、何かがおかしいのです。ファインダを覗くと異様に暗い。それまでZorkiに外付けファインダをつけて目測撮影していたのを持ちかえたとはいえ、さすがにこれはおかしい。緊急事態発生です。

AFは動作するものの、AF動作の前にチッ!チッ!と異音が響きます。レンズを前から見ると電源が入っているのにこの状態。

どうやら絞りを開閉させるギア辺りが外れた可能性が。やがてAFも動作しなくなりました。こうなると電子マウントはお手上げです。

比較で同クラスの純正EF 28-80/3.5-5.6IIを。絞りが開放になっていることがわかるでしょうか。

この状態が正常なのです。鞄にラフに放り込んで雑に持ち歩いたので壊れたのも仕方ないことではあります。このクラスのカメラは素晴らしい性能を気軽に使い倒せるからこそ価値があるのですし。

換えのレンズはいくらでもあるのです。ただ、婿入り先に決まっている若者はこのありふれたSIGMA製標準ズームレンズのマクロ機能を気に入っていたので、純正の標準ズームをつければ良いという話でもないですから、またハードオフ巡りをして代替機を探しておくとしましょうか。

新しいとはいえ90年代末期登場で既に20年前の電子機器な訳で「いつ壊れてもおかしくない」のは確か。ほとんどカメラ(フィルムカメラ)に知識の無い初心者がこういう不調を個人で切り分けるのは難しいし、その点、不調になってもまず直せる場合が多く情報もかえって多い機械式金属製カメラが持ち上げられるのは仕方ないところかとも思うのです。仕方が無いからそちらが持ち上げられているのか本質的に価値があるのかは別問題と思いますが。

まぁ、だからこそレンズもカメラも、今からフィルムで撮ってみようと思うなら壊れてもすぐに代替機が捨て値で手に入り、操作性は現在のデジタル一眼レフとほぼ同じ(順序が逆だ!)というママさん一眼レフこそ至高というこのブログのお約束を再確認するわけですが!

SIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6 MACRO(EF) 分解

そのまま捨てるのも惜しいので成仏したSIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6(CANON EF用)を、ひょっとしたら何とかならないかなと分解してみたのですが、何ともなりませんでした。一部力技で分解(破壊)しています(恥)。勉強にはなりました。

なお、代替レンズとして既に同じものをハードオフのジャンクコーナーから拾ってきました。しめて540円也、マウントキャップ・フロントキャップは付属、フードは別売りで108円でした。ジャンクレンズは付属品もバラバラにされていることが多いので、レンズ本体を見つけたときは周辺のコーナーも探ってみるのが吉です。この辺のことは来るべきEOS Kiss III L解説本で触れたいところですね。

さて、分解過程を振り返ります。最終的に取り出したレンズ前群と後群、絞りユニット。

絞りを取り出せたのは本当に最後の最後だったので私が修理するのはそもそも不可能ごとだったと思うのですが、レンズの前方からアプローチすればなんとかなったかも。なお、手動では絞りは動作しました。広角域と望遠域で別の制御をしているのですかね、これは。

レンズ前群は銘板を剥がしてひたすら回すという定番でいけますのでカビ程度ならすぐ掃除できそうです。後群を取り出すには半田が必要になりますが、絞り開放にして前群を外した穴から綿棒などで掃除できるでしょう。

樹脂製マウントを外した状態で広角端と望遠端。


中身はほんとにスッカスカです。実は私はこのレンズを各種マウント合わせて20本ぐらい買ってます。使いやすくてよいレンズですよ。

ただこのSIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6ですがI型はROMがデジタル対応してないそうでCanonデジイチでは使えないそうです(さっき知りました)。II型は対応しているそうですが。先ほど書いた様にこのレンズはI・II型併せて20本以上、αA・K・F・EFと各種マウントを買ってきましたが、デジタルで使ったことはほぼ無かったのですよね。

AF/MF切り替えスイッチは裏の金具がクラッチ的な働きをして、フォーカスリングにつながるここのギアをモーター側のギアから切り離してフリーにして手動で動ける状態にするわけですね。


このSIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6は簡単な改造で望遠端だけでなく全域マクロにできるらしくて(知らなかった!)。実用品が500円台で転がっているうえ、黴び玉も簡単に掃除できるし、手に入ったら遊んでみるのも手ですね。思ったよりずっと構造はシンプルでしたし(壊しましたが)。

SIGMAのサイトには残念ながら旧製品の情報がほとんど無いので、先頃買い集めた一眼レフ用交換レンズのムックが役に立ちます。

交換レンズ 1999―レンズ選び完全ガイド

交換レンズ 1999―レンズ選び完全ガイド

サードパーティのレンズの情報は集めるのが難しいです。廃業したメーカーのものも。誰ですか、電子化された情報なら管理コストもかからずネットで永久に残るとかほざいてた輩は。結局のところ紙最強ではないですか。

さらに分解を進めます。むしろズームリングの構造が意外というか。AFレンズをここまで分解するのは初めてなので他のものは分からないのですが。パッと見で焦点距離の変動は無段階にリニアでなく段階的に読み取っているように見えます。


五本のラインだと2の5乗で32段階を設定できるのですが、これはおそらく下の四本のライン(2の4乗)で焦点距離を16段階に切り分けているようです。四本のケーブルを縦にバーコード的に見て取ると16パターン確認できました。恐らく一番上のラインは補助的に各領域内での焦点距離の変動を読み取っているのではないか…などと予想してみるわけですが、このあたりはホントに適当言っているので信じないでください。

さて、冒頭で紹介した三つのパーツがあればMFレンズができそうなのですが、流石にここまでに。むしろ鏡胴のカムの構造がスゴくて観察できて良かったなぁと。代替機を拾ってきたのとは別の同じジャンクコーナーにこのレンズ対応のフードがまだあったのを買い忘れていたので後日再訪して追加で三つ確保。併せてこのフードが五つも放り込まれていたわけで、このレンズの普及ぶりがうかがえます。

このCanon EOS Kiss III Lと標準ズームSIGMA ZOOM 28-80/3.5-5.6 MACROの婿入り先の若者は手に取るや否や凄い凄いと大興奮で撮影をしておりまして、その姿におっちゃん色んなおまけつけたくなりましたよ。

カメラやレンズをスペックで殴り合うマウンティングの道具にしているカメラオタクではこうはなりません。

Kissに偏見の無い若い子はいい!ある意味でやっと最晩期普及帯プラ製AF一眼レフ=ママさん一眼レフが、素直にその真価を発揮できる幸せな時代がやってきたともいえるのかなと。

少しでも「写真」をやってみたいという若者の入り口としてこの類いのカメラを届けられるよう努力していきたいと意を新たにした次第です。まる。

Zorki のレリーズボタンとか外付けファインダーとか

突発的な更新ですが、前回と同じくツイッターのまとめ。

ちょうどシャッター幕を張り替えて試写のためにフィルム消費中のZorki初期型。

Zorki/Fed参照元のバルナック型との大きな違いはレリーズボタンにレリーズケーブルをつけられる様にしたことで、立派な改良点なのですが、これがまた個体差またはバージョン違いによってシャッターが切り難いことがありまして、この水準機付きボタンはかなり良いです。ノーファインダーでやってるときに巻き上げノブと間違えるあたりが未熟者ですが。

ただし、これも個体やバージョンによっては装着できないことがあるというのがFed/Zorkiのように生産数が桁違いに多く、細かなバージョン違いがある機種の難しさでして。

なお、Fed / Zorkiともホントの初期の初期型はバルナックライカに近い形状だそうです。Fedは所有していますが、Zorkiの方は現物は確認してません。

ものによってはこちらを付けています。三個セットで890円と嘘みたいな値段ですが充分な実用品です。付く付かないは自己責任でお試し下さい。ま、安いので

なぜか呼び出されませんが、Amazonでソフトレリーズシャッターボタンで検索して下さい。安いのいろいろ出てきますので。ソフトレリーズボタンは安価に撮影感覚を調整できるものなので、見た目だけでなくお勧めのカスタムですね。

これまた手持ちのZorkiです。

細かいバージョンは昔は確認していたのですがもう忘れました。

一見キレイなのですが、この個体はスプールの下部の羽根をねじ切った、この個体とセットだったスプールでしか正常動作しないという嘘みたいな話があります。工業製品の精密さと大工仕事のおおらかさが同居するのがソビエトカメラの魅力と言いますか。

さて、こちらのJupiter-12をつけている方にはずっとターレットファインダーをつけていたのですが、これが重いし覗きにくいしどうしたものかと思っていまして。手元のソ連製35mmファインダーはシューが硬くてつかないのです(同じメーカー製なのに!このバージョン/個体ごとのシューの厚さの違いもよく報告されるところ)。

というか手持ちの外付けファインダーのほとんどが付かない固さで。

まぁ、もともとレンジファインダー機、特にバルナックライカおよびそのコピー機で撮っているときは半分ノーファインダー(妙な言い回しだけれど)みたいなものでフレームの中心に対象が入っているのがパッと確認できれば充分なのです。

そこで思いついたのがSIGMA DP2xにつけているVF-11。

SIGMA ビューファインダー VF-11 925901

SIGMA ビューファインダー VF-11 925901

ここで何か妙だと思った人は正しく、VF-11は広角のDP1(換算28mm)系列用。これをDP2x(換算40mm)で使っていました。何故かといえば40mmのファインダーよりその方が気持ちよく撮れたから、というしか無いのですけれども、28mmの視覚の中央部で瞬間的に40mmを捉えているのでしょう。

そんなわけで、冬眠中のDP2xから外したVF-11をZorkiへ。

幸い固いアクセサリーシューにもなんとか嵌まりました。しばらく使っていなかったので接写してみると流石に汚れが目立ちまして掃除してやらねばいけません。随分しっくりきて持ち出したくなります。ドンドン取りたくなる気分にさせる、というのはなかなかバカに出来ることではありません。

Fed / Zorki / バルナックライカでスナップを撮っていると、こまかにピントを合わせたり絞りを変えたりはしなくなります(私の場合)。

町を歩いていて、そのときどきの天気や場所(日陰・アーケードの中など)に合わせてシャッタースピードをおおまかに変えます。これは習慣づいています

あとは撮りたいもの / 構図に身体が飛び込んだときに、自然にシャッターが切れています。体感的には一番シンプルで"早い"と感じられる撮影で、それがとても気持ちがよいので、そのあたりが私が未だにFedやZorkiを使っている理由でしょうね。