書肆萬年床 光画資料室

写真史や撮影行為にまつわるあれこれ、またはカメラ等についてよしなしごとを放り込む納戸

都市伝説の結末 / OM(AF)マウントレンズのOM(MF)機への装着について

さて昨晩、銀塩AFカメラについてそれなりに有名な都市伝説がデマであると確定したのでまとめておきたいと思います。

起点は佐藤さん(@sigeosato  )のこの発言。

このOMAF用レンズをMF機に付けると外れない」というネタ、今日現在(2017/07/20)で、Wikipedia(ja)のOLYMPUS OMシリーズの項にも記述があります。

オリンパスOMシステム - Wikipedia

現在はマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼(OM-D)として展開しているOLYMPUSのOMシリーズですが、元々銀塩MF一眼レフの名機として著名で、特に一桁機は今でも人気が高いのは言うまでもないことでしょう。

銀塩OM一桁機については「プリズムがモルトの浸食を受けて劣化する」というのがよく知られた持病としてあり、これは事実です。またその解決策として、同じOMシリーズではあるものの一桁機より人気が薄く安価な二桁機であるOM10からプリズムを移植するという手が紹介されていたりしますが、ジャンクからならともかく実働個体からプリズムを抜き取るのには嫌悪を示すユーザーも多いので、注意が必要でしょう。

さて、この銀塩MFカメラの歴史に燦然と輝くOMシリーズですが、AF時代に突入したときにOM707という機種を登場させています。このOM707は新マウントではなくOMマウントのままでAF化を果たしていますが、このとき一つの変更をしたことがよく知られていて、それが今回の都市伝説の勘所です。

実はMF機のOMシリーズではレンズ取り外し用のボタンがレンズ後部にあるというのが一つの特徴となっていますが、マウントをAF対応させる際、このレンズ取り外し用ボタンを他メーカーの機種でも一般的なボディのマウント側面に移動しています。その結果、OM707とともに登場したAF対応のOMレンズからはMF機のようなレンズ取り外しボタンはなくなっています。

その結果、以下のような論理展開が成立します。

  • OMAFレンズをOMAF機(OM707)につけると、当然ボディ側取り外しボタンで取り外せる
  • OMMFレンズをOMAF機につけても、レンズ側の取り外し機構で取り外すせる
  • そして、OMAFレンズをOMMF機につけると、レンズ取り外し機構がない!つまり取り外しできなくなってしまう!

もっともらしい話ではあります。ですが、実はこんな問題に直面する例は他にいくらでもあり、メーカーが想定していないはずがない話なのです。例えば佐藤さんのこの発言に集約されるように。

 TLに実際にOM三桁機を使われているフリスク( @FRlSK1  )さんと日本光学くん( @mouko281985  )さんの反証が上がってきました。

もう充分でしょう。

この都市伝説は結構有名で、いま確認する余裕はないですがひょっとしたらなんらかの活字化もされていたかもしれないぐらい広まっています。こんな実機をちょっと確認すればわかる話がなぜここまで人口に膾炙することになってしまったのかと言えば、またフリスクさんの発言で申し訳ないですが、一つにはこういうことがいえるでしょう。

そう、OMAF機は今"希少"なのです。ですが、売れなかったか...と言えばそんなことはないはずです。メーカーが期待したほどであるかどうかは別として流通している中古の数を見ればそれなりに売れたのだろうというのは分かります。少なくともSIGMAのSAマウント機よりはよほど手に入れやすいでしょう。

希少だからこんなデマがはびこったのか?もう一歩踏み込む必要があると考えます。つまりはこういうことです。

嗤う」という言葉が重いです。そう、OM三桁機(AF機のOM707とパワーフォーカス機のOM101)は失敗作であるという評価が定着しています。

傑作機とされるMF機OMシリーズに対して、AF化の波に乗り遅れた中途半端な駄作機として世に出、栄光あるOMシリーズの命脈を絶った不肖の子、見れば栄光の"クラシックカメラ"の殿堂入りしたMF機の金属カメラとしての質感と重厚さに比べて、なんと三桁機の安っぽいプラカメぶりよ...自分で書いていて気が重くなりますが、AF機のOMシリーズについてこれくらいのことは思われているだろうという印象があります。

「定番ネタ」という言葉が示すように、この"失敗作"のイメージに対してこの都市伝説はあまりにピッタリはまりすぎていたのでしょう。本当かどうかではなく、"イメージぴったり"だったことがこの伝説を支えたのではないかと思われます。

実際、サードパーティのOMAFレンズをMF機につけた場合はついてしまうことがあるようで、その場合は本当に分解しなければ取り外せない可能性があり、それがこの都市伝説の萌芽である可能性はなきにしもあらずです。しかし、それは間違いなく保証外の行為であって、サードパーティにもメーカーにも責任はないことです。

OM三桁機が本当に"失敗作"だったのか。市場は当時評価しなかったにしろ、今の視点からとらえ返せばまた別の視点から評価されるところが無いか。そもそも、本当に使えないのか。OMのAF機に高まった当時の期待とメーカーの出してきたものとの落差はあったのかもしれませんが、今のユーザーがそれにとらわれる必要も無いでしょう。

実際に使われている道具は常に美しいと思います。私の手元にもOM101のボディはあるのですが、OMAFレンズが手に入らないまま何年塩漬けにしてしまっていることやら(汗)

1960-70年代のプロダクトデザインが再評価されているように、そろそろ80年代のデザインが再評価される時が来ないかと思っているのです。

最近、それが全盛期に比すれば誤差の範囲とはいえフィルムカメラが盛り上がっている様子があり、しかも、ごく一般的な普及帯コンパクトカメラだ!という面白さのある現在、普及帯プラ製AF一眼レフを積極的に推し進める当ブログとしても、過去の情報の焼き直しだけではなく、改めて2017年現在の情報として記事を書いていきたいと、気を引き締めた次第なのでした。

ま、次の更新がいつになるかは神のみぞ知る、というところなのですが...(汗)

私が愛用しているFed / Zorkiなどもそうなんですが、やはり色々デマがあります。これはカメラに限らず車やバイク等でもそうでしょうが、つまりはなにがしかの"伝説"が生まれる余地のあるジャンルはすべからくそういうものなのかも知れませんね。

オリンパスPEN&OMのすべて (Gakken Camera Mook)

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