書肆萬年床 光画資料室

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入門機クラス銀塩AF一眼レフシリーズのお勧め度の比較 その3「PENTAX MZ(二桁)シリーズ」


PENTAX MZ-50 + PENTAX-F 4-5.6/35-80 + KODAK ULTRAMAX400

こんな感じでやってます

この記事を書くに当たっての基本姿勢についてはこちらをご覧ください。
また、「いまからフィルムで撮ってみたいという人にEOS Kiss シリーズ(具体的にはIII / III L)をお勧めする5の理由」もご一読いただければ。

入門機クラス銀塩AF一眼レフシリーズのお勧め度の比較

裏タイトル「EOS Kissシリーズ以外が初心者にお勧めでないちょっとした理由」の最終回です。各社の登場順は私が巡回しているハードオフや委託販売を行っているDPEでの目撃数によります。というわけでこの記事での3番手、お勧めのEOS Kissから数えれば4番手はPENTAX MZシリーズです。

MZシリーズのおすすめ具合

さて、最終グループのPENTAX MZ(二桁)シリーズですが、結論から先に言います。「絶対におすすめしないよ!!さぁ使ってみようよ!」。うう、どう頑張ってもこんな矛盾した感想になるんですよね。

(状態が)危険なPENTAX AF一眼レフ

あくまで「デジタル一眼レフの経験はあり、今から35mmフィルムでの撮影を始めてみたいという初心の方向け」という視点での話、というのを念頭に置いていただきますと、シリーズ初代のMZ-5無印の登場から20年が経っておりまして、ミノルタαシリーズと同じくMZシリーズも経年劣化という大砲の直撃を喰らっています

プラ製AF一眼レフでは(というかデジタル一眼レフでもいずれ)避けては通れない問題であるゴム素材の加水分解(ボディがベタベタになる奴です)からは免れているものの、α-Sweetの宿痾がペンタダハミラーの酸化による変色なら、MZシリーズの宿痾はミラーとフラッシュを制御するプラ製ギアそれぞれの劣化による破損です。特にミラーアップの方はMZシリーズだけでなくて、ペンタックスにおいてはMF時代から続く問題です。

そんなわけで、MZシリーズに限らずPENTAXのプラ製AF一眼レフのジャンク棚物件については、初心者はまず「回避」を推奨します。

一見まともに見えるものでも、持ち帰って電池を入れて、ワクワクしてシャッターを切ったその瞬間に「バコッ」だの「ガコッ」だのと形容しがたい怪音を残してミラーアップし、昇天したのは私の手元だけでも一台や二台ではないのです(涙)。

もちろん、これは発売時点からそうであったという訳ではなく、そこから10年以上経ってメーカー保証もとっくに切れた現在だからこそ顕在化した「問題」です。2016年の現在まで使い続けられていることをメーカーは想定していないし、メーカーの責任ではない括弧付きの「問題」であることを肝に銘じておく必要のあることは繰り返し強調しておきます

そんなわけでざっくりMZ(2桁機)シリーズのお勧め度をまとめておきます。

3番手 PENTAX MZ(2桁機)シリーズのお勧め度
  悪くないファインダー
  MF機を彷彿とさせるハンドリング
  操作性がシリーズ内でまちまち
 × 弾数少か極少
 × 価格やや高め
 × 格安レンズ少ない
 ×× バージョン違いの多いKマウント
 ×× ミラーアップ・フラッシュ不良個体多数

ジャンクコーナーのペンタックス機には「絶対に」手を出すべきではありませんが、MZシリーズ自体は良いカメラで、MF時代のペンタックス機を思い起こさせるコンパクトかつシンプルなハンドリングで、非常にリズムの良い撮影体験をもたらしてくれるのは確かなので、興味のある向きは保証付きの専門店で実機を手にとって選ぶのをお勧めします

余談 その1 ふしぎなMZシリーズ

ここからは余談。

そんなMZシリーズですがそもそもジャンク棚ではあまり見かけないし、その結果として決して安くありません。対照的にジャンクコーナーを埋め尽くしているKissシリーズと比べて、現役当時は肩を並べるくらいに売れていたという記述を読んだこともあるのですが、その実、単体のムックなどはどうやら発行されておらず、MZシリーズがどんな層にどのように届いていたのか、今となってはなかなか見えづらいものがあります。

売れに売れてPENTAXに我が世の春をもたらし、645や67機を開発する原資になったという記述も目にしたこともあるのですが、眉唾なのでしょうか?

またCanon Kiss、MINOLTA α Sweet、Nikon Uと、それぞれの普及機・入門機としてのシリーズの性格付けは明確で(もちろんそのスペックはとても普及機というものではなく時に中級機にさえ凌ぐものでしたが)、まず届けたいのはファミリー層であるというメーカーの意志はそのネーミングからも明確であったのに対して、MZシリーズはそのあたりがどうもはっきりしないというわかりにくさがあるのです。

そもそも最初のMZ-5(1995)は「中級機」です。それ以前の自動化を進めたZシリーズの方向を転換してもう一度シャッター速度や露出補正をダイヤルで設定するクラシックな操作性を、MF時代のPENTAX機を彷彿とさせるコンパクトなボディに実現しています。当時、ミノルタの自動化を極北まで進めていたxiシリーズが商業的に失敗し、第四世代のsiシリーズに転換したことが支持を集めていたというのもあるのでしょうし、実際PENTAXの転換は支持を集めた(らしい)わけです。


そのあと廉価機のMZ-10(1996)に、そらにその廉価機のMZ-50(1997)といった2桁のナンバリングのMZシリーズが出ます。Kissモードダイヤルに相当する(オート)ピクチャープログラムを採用した辺り、またペンタミラーの採用やエンジニアリングプラスチックのマウントなど、この2桁機こそが他社の普及機にぶつけようとしたクラスなのは間違いないでしょう。

次のMZ-3(1997)は再び一桁の中級機で、ダイヤルによる操作性などMZ-5のブラッシュアップ版。ここまでは分かり易くて良いのです。あ、ちなみにキチンとした保証付きで3,000円くらいまで手に入るなら、いずれMFやマニュアルでの撮影に進んでいくうえで、このMZ-3を一番お勧めします。なお、Wikipediaには堂々と"CONTAX Aria(1998)のベース"と書かれていますが、ガセですね(そういう噂があったのは事実のようですが)。

ところが、次のMZ-7(1999)は1桁のナンバリングで位置づけとしては中級機なのですが、系譜としてはMZ-10からの進化版です。もちろん中級機でもよりマニュアルな操作性を採用した3,5とモードダイヤルを採用し、よりプログラムオート寄りのチューニングがなされた7はキッチリ棲み分けがされていると言えなくはありません。が、3,5,7のナンバリングに意味を見いだすのには少々難しさを感じるところ。

そして、そのMZ-7をベースにして進化と言うべきか退化と言うべきか、再度、普及機のMZ-30(2000)が登場します。10→50(→7)→30と、ナンバリングが巻き戻っています…このあたり、私にはどうも理解できないでいます。いや、これで50よりスペックが上というなら30も分からなくはないのですが、決してそうとばかりも言えないし、中級機の3→5(5N)→7と関係性が見いだせないし、それ以前のZシリーズとパラレルな訳でもなし。

ちょうどZシリーズに触れたところで、ここからさらに混沌度合いが加速していきまして(笑)、むしろ先代のZシリーズの系譜からハイパー操作系の血を引いた突然変異の"特別機"、MZ-S(2001)が登場して、いよいよMZシリーズの性格が何でもありになったと思ったらMZ-7の後継機はMZ-L(2001)を名乗って登場するといった次第です。

このLSSpecialかまたはSuperあたりから名付けられているのに対して、Limited(=限定版)あたりが元だと思っていたらなんと"LOVE"らしいのです。MZ-Sは確かにその他のMZシリーズとは別個のラインから登場してきたのだというのがデザインからも明白ですが、MZ-Lは思いっきりMZシリーズのデザインのラインにのっていまして、正直どこがLOVEなのか私にはまったく理解できません(教えてペンタキシアン!)。

こんな感じでZシリーズの"後を襲った"MZシリーズというよりは、MZシリーズというミクロコスモスのなかで改めて百花繚乱の進化の系統樹を生み出してしまっている様な印象があるのです

最後にはMZ-30というよりは50の更に廉価版、ミノルタでいえばα-360siのような、プログラムオート専用機MZ-60が出て終了です。*istは別シリーズと考えております(恐竜の子孫としての鳥、みたいな)。

余談 その2 ペンタックスというブランド


PENTAX MZ-50 + PENTAX-F 4-5.6/35-80 + KODAK ULTRAMAX400

そんな訳でMZシリーズは機種ごとの性格も明確に線引きされているとは言えませんし、途中でマウントの変更なんかもあっていることから、この機種まではこのレンズが使えるけれど、次のこの機種からはこのレンズは使えない!っていうのもあって初心者向けとしてはやっぱりオススメできないところではあります。まぁ、これはNikon Uあたりにもあてはまることですし、歴史のあるマウントの宿命かもしれませんが。

別の角度から見れば、すっきりと整理されないってことは、それぞれの機種のなかで諸要素が固有のバランスと魅力を持っているとも言えまして、なんというか私はペンタックスに詳しくないのですけれども、スゴく泥臭いイメージというか、あまりクレバーでは無く色んなアイディアを試してはそれを成熟させる前に他に飛びついて言ってしまう様な、ある意味ではアイディアに溢れた職人集団が嬉々として開発にいそしんでいるようなイメージを持っています(この辺り、様々なアイディア・デザインを一機種ごとに使い捨てにしていったコンデジOptioシリーズのイメージが還流しているかも知れません)。

なお、忘れてましたが1997年にはMF専用機のMZ-Mが出ています。実はMFからAFへの過渡期にはCanonのEF-M(1991)とかNikonのF-601M(1990)といったAF機をベースにしたMF専用機が出ていますが、1997年というAF全盛期に、これがうるさがたのマニア向けの高級仕様というならともかく、MZ-3(または5)から色んな機能を省きまくったあげくむしろ2桁機よりの質感になったという機種で、なぜこの時期に、どんなユーザーを念頭に置いて出してきたのかよく分からないのです。そういうところも、なにかこのメーカーの生き様のようなものを感じてしまうところなのです。


PENTAX MZ-50 + PENTAX-F 4-5.6/35-80 + KODAK ULTRAMAX400

おまけ

CAPA編集部さんペンタックス一眼レフのすべて (Gakken Camera Mook)』の出版を熱望します!もう少し客層を広げるなら『Kマウント一眼レフのすべて』もありかと!