書肆萬年床 光画資料室

写真史や撮影行為にまつわるあれこれ、またはカメラ等についてよしなしごとを放り込む納戸

件の系統のフェイクライカ 初期型 レポート 速報版

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件の系統のフェイクライカの初期と思われる個体を入手しましたのでレポートします。この系列のフェイクの記録も分散しているのでおいおいまとめていきます。

そのときどきの気付きをtwitter上にメモしてきましたが、twitterは過去ログの検索性が良くなく、また私も投稿したことそれ自体を忘れてしまうようになってしまったのでこのような形で定期的にまとめていくことを心掛けたいと思います。

twitterのあとに続けていく形の投稿ははてなで記録する際には重複が生まれて可読性が良くないのですが、そのような事情をご理解いただければ。逆にtwitterでツリーが分散した際には議論をまとめにくいのですけれども、それも流れを再構成してまとめることができるはずです。と、考えたのですがやはり読みにくいので改稿しました。

全体像

件の系列についてネット上であらたに画像を発見し、収集整理を進めていますが、今のところ確認している中でもっとも源流に近いと推測される個体を入手しました。レンズはIndustar-22で、これが当初からのものかは不明です。上下を緑に塗装しているのが特徴でしょうか。中期以降はマットブラックをベースにナチスドイツの意匠を過剰にまとい始めるのですがこの時点ではアクセサリーシューにひっそり彫り込まれている国章がなければミリタリー風というところに落ち着きそうな仕上がりです。

塗装の質自体は悪くありませんが後塗りなのはすぐ分かります。

軍艦部

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軍艦部です。まだ塗装ものちのように洗練されていないこの段階では、左肩のこの「@」がなければ判別は難しかったろうと思われます。そのうえで"BetRiehsk"の位置とシリアルに目が行く。もちろんこれは“Betriebsk”の誤記と思われ、加工者はまだこのあたりの特殊表記に習熟していなかったのでしょうしRが小文字扱いの辺りラテン語系のアルファベットにも疎かったのだろうことが分かり、この個体の作者のプロフィールと制作地がどこが読み取れます。

@」のマークがこの系統の指標になるのですが、初期からのものと考えて良さそうです。まだそれが何を意味するのかは分かっていないのですが。加工チームの活躍が90年代後期だったのは間違いないようなので、逆に今では忘れられたかも知れませんが当時のインターネットの象徴でもあった「@」の輝かしい(そして少々うさんくさい)イメージが重ねられたところはあるのかも知れません。

また"BetRiehsk"の最後のKは大文字の書き方で小文字のサイズになっていますが「BetriebsK」とすべきところ。Betriebs Kameraの略で"業務用カメラ"とでも訳すべきか。ライツ社が社内で使用するためのカメラということで要は「レアもの」の印という訳で、本物のライカにこれを刻印すればレアなライカのフェイク(=本物ベースのフェイクライカ)が一丁上がりというわけですが、ソビエト製フェイクライカにもよく刻印されています。ただ、どちらかといえば本来の意味を離れて「レアものの符丁そのもの」になって色んな形で様々な刻印をされており見所ではあります。

今回のフェイクではかなり丁寧に刻印しようとしていますが、その刻印の間違え方から素性が読み取れるのが興味深いところなのです。

アクセサリーシュー

興味深いのがシュー内にナチスドイツの国章が彫られていること。ペイントではなく、この位置でのこの加工は初めて見ました。

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レリーズボタン周り

レリーズボタン周り。一見、ライカ風の加工を施したように思われますが、実はこれはFed初期型のレリーズボタンそのもの。速報の段階では「Fed 初期型のレリーズボタンそのもの」と書きましたがこの点についてはもう少し検討したいところです。しかし距離計連動のコロがくさび形に鳴っていることからベースがFed 初期型であり、いわゆるFed / Zorki系列の特徴であるレリーズケーブルが装着可能な皿形に改良される前の個体をベースにしているものと思われるのは確かだと思われます。

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裏蓋内部・本体下部

裏蓋内。まだこの系列の中期以降に見られるバルナック風のフィルムカットの説明書きなどの加工は見られず、また本体下部にも特別な加工は見えず、ベースのFedそのものです。このあたりもこの系列ではかなり早いものであることを思わせます。

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このフェイクライカの系列の特徴として手仕事なのは確かとしてもかなり丁寧な加工というのがありますが、シューや(スペルが間違っていても)文字の彫り込みの細かさからそれが初期からの特徴というのが分かります。しかし同時に塗装などはこの段階では現在一般に見られるフェイクライカのそれと比較してぬきんでて優れているというものではありません。

この個体はおそらく実写には長く使われていないと思われ、グリスの劣化が感じられて巻き上げが重くなっています。レンズのヘリコイドも重く分解清掃とグリスの塗り直しが必要そうです。

しかしファインダー周りは加工時にきちんと分解清掃されたと思われ美しい視界が保たれています。ただ、中期以降の個体のように光学系の入れ替えまでは行われていない模様です。ファインダーと距離計連動機構への拘りは中期から後期に進むにつれてハッキリしていきます。

また初期型では刻印さえいじっていない可能性が出てきた(?)レンズのデコレーションも進みますが、こちらの精度は今ひとつ、というより無限遠を出す技術を持っていなかったように思えてこれはまた改めて報告していきたいと思います。

(この記事は次の投稿から始まるツリーを元に改稿したものです)