書肆萬年床 光画資料室

写真史や撮影行為にまつわるあれこれ、またはカメラ等についてよしなしごとを放り込む納戸

フェイクライカとはなにか / フェイクライカの新潮流 (暫定版)

フェイクライカとは何かを検討するために関連領域を整理したいと考えています。そのためのメモ書きとして随時編集される頁です。(最終更新 2019/03/07)

(1) カスタムライカ/レアライカ
カスタムライカは純正のライカを元にユーザーの実用・要望に合わせて改造を施したもの。ライツの手による純正のカスタムは幅広く行われていたが、それからサードパーティによるものまで、そのカスタムの実際も再塗装など見た目に係わるものから機構上の改造まで幅広い。

レアライカは、印象的な型番や事情で台数が少ない形式/仕様のもの、あるいは贈答品や軍事向けとして特殊仕様のものなど所謂希少品であるが、ライカはこの手のレアな個体については基本的に記録されていて、すぐに確認できるということは念頭に置いておくと良いだろう。

さて、先のカスタムライカのうち、特に純正でないものが元のオーナーの手を離れたとき、その来歴・背景が失われて"レアライカ"としてフェイクライカ化する場合があり、注意が必要である。ライカコピー/コピーライカにも諸事情で様々なカスタムを施された個体があり同様の問題を抱えている。

(2) ライカコピー/コピーライカ
主にバルナックライカの機構を参照して生産されたRF機の総称(一部目測機)。ライツのパテントが有効であった時代にはそれを回避したものから主に戦中に国策からそれらを意図的に無視したものまで参照の度合いは様々だがライカの設計をベースに各国で「正規に」生産されたカメラである。

それぞれの国の技術力と需要により様々な発展を見せる。1950年代中頃からは当時のカメラ機構の発展を受け独自の進化を遂げたもの、M3の思想が還流したもの、一眼レフへ発展を遂げたものなどがある。

主な機種にFed,Zorki(ソ)、Canon,Nicca,Leotax(日)、Reid(英)、Kardon(米)、上海(中)などがある。

 

(3) フェイクライカ
(2)のうち比較的安価かつ大量に流通するソ連製のFed,Zorki等をベースとして、参照元であるバルナックライカ / M型ライカを偽造したもの。ライカが高級機であり中古市場でも高値で流通することが広く知られていることが背景にある。

加工の精度は様々で稀少な特殊仕様機を高精度に模したものから、バルナックライカのシルエットから大きくスタイルを変じたFedやZorkiの後期の機種の外装を塗り替え刻印を打ち換えただけのような大味な代物まで程度は様々。遊び心と創意工夫に満ちた高度な加工品も現れている。しかし内部機構が実際の撮影に耐えない機体もあるので注意が必要である。

 チヨカなどの生産台数が少なくレアなものとして扱われる他のライカコピー機のフェイクが作られることもある。90年代のクラシックカメラブームの折りにそれに付随するジャンルとして東側(社会主義国)のカメラのブームが起こったが、その際、ソビエトにおけるライカコピー機であるフェドにおいて、そのあり得ない(あるいは非常に稀少な)仕様であるフェド・シベリアなどのフェイクが大量に制作され、その系譜と思われる機種はeBayを中心に今なお流通する。

なお、(1)で触れたようにカスタムライカが市場に流れた際にフェイクライカ化する場合がある。また純正のライカを元に刻印を打ち替えたりリペイントを施したりすることで記録上の「レアライカ」の仕様に合わせたもの(あるいは記録にはないがありそうなもの)が作り出されることも多く、本来はこちらを指す用語であったろう。

(4) サモワールイカ
(3)の一部であり(3)と同義で使われることもあるが、騙すための手段としての「フェイク」ではなく、初手から偽物(コピー・フェイク)であることを暗黙の了解としたうえで、安価に流通するものである。

元は90年代のクラシックカメラブームの折りに田中長徳翁の著作で主張されたものと思われるが、(3)のうち旅行者の土産物になるような安っぽい金メッキの個体をロシアの給茶器(サモワール)のようなものとして見立てたものである。

ja.wikipedia.org

 

偽ライカ同盟入門

偽ライカ同盟入門

 

 近年、この流れから「もっともらしい」フェイクではなく、絶対にあり得ない仕様やカラーリングを追求し好事家に「ファンタジー」を提供する系統が生まれている。(後述)

 

編集メモ「フェイクライカの新潮流」

ここからの一連の流れで(1)カスタムライカ、(2)ライカコピー/コピーライカ、(3)フェイクライカ、(4)サモワールイカを便宜的に分類した。

(3)で触れたようにありふれたコピーライカを元に稀少なコピーライカを生産する例も観測され、これらは(3)と(4)の切り分けの難しさを示す例である。いくつかの工房が存在すると思われ、おもに東欧がその所在であろうと思われるが、今後の研究課題である。

課題は(4)で、(3)フェイクと(4)サモワールの境も完全に切り分けられるものではないが、フェイクは"偽物"であり、相手を騙す"手段"であって目的はそれを高く売りつけてもうけを出すことにある。それに対して(4)は偽物であるのは前提であって売り手も買い手もそのチープさを楽しむようなところがあった。手段が目的とすり替わり始めたのである。

そして繰り返しになるが、近年(4)の発展型ともいうべき、歴史的な参照元を持たない独自の解釈・仕様による改造を施した機種や果ては欧州各地の伝統工芸の技法で彩色を施した機種などがまとまった数生産され、eBayなどで継続的に出品されているのが観測されている。これをどう呼んだらいいのか考えあぐねている。

ぶっちゃけてしまえばどう考えてもこれはもう「作ること自体が楽しくなっちゃった」次元で「『俺ザク / オラザクとか『僕の考えた最強のガンダム」の類いであり、eBayを継続的に観測する限りでいくつかの系統(工房?)が観測されて発想と加工の巧拙を競っているように見えるあたりも興味深い。

 少し前からはバルナックライカのカッタウェイ(スケルトン)モデルが観測されるようになっているが、カラーリングや貼り革の加工に違いがあるようだ。これは明らかに観賞用に作られたものである。

 また、おそらく最近の登場と思われるのが、Leica Geodesyなるモデルが派生している。名称は参照元があるが実態はまるで異なるものである。まずはFed / Zorkiをベースに軍艦部を新造(!)したライカスタンダードコピーがあり、ある程度まとまった数が流通しているが、そのバリエーションであり、二つのシューがつくはずの片方に固定の水準器を装備したものである。無論こんなライカは歴史上存在しない。

そのライカスタンダードのフェイクには一時期、シューの部分に汎用の水平器を付けた個体(デザインとしてはかなりモダンなもの)が流通した時期があるので発想としてはそれをクラシカルに再解釈したものなのかもしれない。

この系統のフェイクライカの"楽しさ"を伝えるのにどういう呼び方があるのか。と、そういうことをつらつらと考えていてこの(4)の発展型ともいうべき『歴史的な参照元を持たない独自の解釈・仕様による改造』を施した機種や果ては『欧州各地の伝統工芸の技法で彩色』を施すような機種の『創造性』に対して一時『ファンタジーイカ』呼称してみたが、現在はあの映画にインスパイアされて『シン・ライカ』と仮称している。これについては今後の課題である。