書肆萬年床 光画資料室

写真史や撮影行為にまつわるあれこれ、またはカメラ等についてよしなしごとを放り込む納戸

件のフェイクライカの系列における一連の指標についての考察

私が一種の系統関係にあると考えている件のフェイクライカの系列には継続して出現が確認される特徴的な指標=マークがいくつかあります。また、それぞれの指標と個体の特徴にはある程度関連が見えるところがあって、係わった職人・担当者を表すものではないかと考えていて、さらには担当者同士の関係性などもボンヤリ浮かび上がってくるところなのです。

以下の原稿では2019年6月現在で確認できる指標を整理したいと思いますが、これまでにも増して推測に推測を重ねたメモであることはご注意ください。今まで一連の系列としてきた件のフェイクですがお互いに関係するものの大きく2つのグループに分かれるのではないかというという可能性もあり、このメモでの考察はのちに根底から翻ってしまう可能性も大であることをご理解の上で読み進めていただけるとありがたいです。

・「@」の指標
フェイクライカではなくレアライカの証拠とされるBetriebskという指標とともに現れることが多いのです。Betriebs Kameraの略で、営業用もしくは業務用カメラとでも訳すべきなのでしょうが、ライツの社内で業務用で使われた個体に刻まれた印ということに"なっています"けれども、Mシリーズ後期のものなどはマニア向けにあえて生産されたものではないかという疑いも。

f:id:afcamera:20190609024603j:plain

f:id:afcamera:20190609024620j:plain

初期のものはBetriebsのスペルを間違っており、またその間違い方からラテン語系のアルファベットに通じておらずスラブ語系のアルファベット=キリル文字に親しんでいる文化圏の人物であることがわかります。

photoworks.hatenablog.com

一時期、「@」氏は二次大戦オマージュモデルとは無関係かとも考えましたがナチスの国章を目立たない形で刻んだ個体(上記の記事で紹介している初期型)を入手したので無関係とばかりも言えないようで、またネット上で数は少ないながら「@」の指標のある二次大戦オマージュモデルも確認できています。

f:id:afcamera:20190609024714j:plain

初期型個体のデザインは主に二次大戦オマージュモデルに関わったと思われる「M」氏の初期のものと非常によく似た仕上がりであることにも興味をひかれます。

「@」氏はこの系列の後期で既に報告済のカッタウェイモデルに関わっていますが、最近字体のかなり稚拙な時期からカッタウェイ(=スケルトン)機を作っていたことを確認し、後述する「SMK」氏との関係が読み取れました。

その初期型のカッタウェイ機のボディの肉抜きの仕方に特徴が有るのですが、それは既報のカッタウェイ機を超えて2019年現在にeBayに現れるカッタウェイ機の肉抜きに通じる特徴であるることから、ひょっとしたら彼も今なおフェイクライカに関わっているのかも知れませんが「@」マークなどの明確にそうと読み取れる指標はなく、今後の課題です。現在のカッタウェイモデルに関わっていることが強く示唆されていると考えるのは次の「M」氏です。

 

・「M」の指標
この系統と考えられるフェイクライカのうち、twitterで紹介すると非常に反応が大きいのが第二次大戦オマージュモデルで特にナチスドイツオマージュ機です。

無論実際の軍用カメラにそんなに"ド派手"なものはありえないのですが、そこが軍事の実際とサブカルチャーにおける幻想との落差があると思われて興味深いのです。 

この第二次大戦オマージュ機の装飾中に現れる(ないこともある)「M」がこの人物の指標ではないかと考えています。

f:id:afcamera:20190609025011j:plain

f:id:afcamera:20190609025027j:plain

この系列を考えるとき、この時期の二次大戦オマージュモデルの数が他を圧倒していて、"一連の"というのは実はフェアではないというのも確かなのです。

また、その多数の第二次大戦オマージュモデルのうち頻繁に現れる指標が「M」氏と次の「SK」氏で他の指標が現れる頻度はかなり少ないようです。

この人物はおそらく今も(または近年まで)活動していると思われてeBayで"Russian"あるいは"Fake Leica"を検索すればこの第二次大戦オマージュ機のデザインを引き継ぎ、一部発展させたモデルを容易に見いだすことができます。

2019年現在でeBayに大量出品されている二次大戦オマージュモデルの後継機はシュー部分にMを○で囲んだ意匠をあしらっているのが特徴的で、おそらくこれは「M」氏の指標だと考えています。

なお、現在eBayに出品されているモデルは個人的には装飾書体が大仰になりバランスを崩しているように思われますが、それは次の「SK」氏の影響もあるのかもしれません。また彼は内部の機構には(おそらく)触れないようで現在のeBayの出品をみると外装と比較して内部がボロボロのものがあり、そのあたりが一連の系列のフェイクライカがチーム作業によるものであったのではないかと推測する理由でもあります。

たとえばこのブログでデジカメ化のベースになっているのもそのような個体のひとつです。

 上述したようにMの指標のある個体でもこの先に報告した「@」氏によると思われる初期型とほぼ同型のかなりシンプルなものがあります。(以下の個体はリペイントの可能性もありますがおそらくは当初からのものです)

sg.carousell.com

そのため一時「@」氏と「M」氏は同一人物かとも思ったのですが、M氏は途中から件の系列には現れなくなり、それが件の系列のフェイクから第二次大戦オマージュモデルが消えるのと軌を一にしています。


・「SK」の指標
そしてもう一人、第二次大戦オマージュモデルの頃のフェイクライカに登場する指標が「SK」氏です。彼の関わった個体が今のところ手元になく、全てウェブ上の手がかりからの推測になり不十分な考察しかできない人物です。

この「SK」氏の係わるデザイン・カラーリングは私の主観になってしまいますが、少々装飾過多というか、装飾的な書体を多用する傾向にあるように思われて「SK」の指標もそのような書体が使われています。

このブログで紹介されている個体のようにむしろその装飾性が良い方向に働いていた例もあるので決して悪いとばかりは言えません。

kutanmari.exblog.jp

ただ、次のフォーラムで言及される個体になるとむしろ別の方向に向けて走り出しているような印象を受けます。

f:id:afcamera:20190609025753j:plain

(出典) Painfully bad Leica fake of the day - Rangefinderforum.com

既出の通り現在のeBayにおけるフェイクには、先の「M」氏とこの「SK」氏の二人のデザインを引き継いだものが多く見られます。この時代には登場しない○にmの図案化されたマークとともに「SK」のマークも見られるものがあります。

現在のeBayで流通する個体が件の系列の二次大戦オマージュモデルのデザインを引き継いでいたとしてもレタリング部分の装飾書体が派手になっている場合が見られるのが当時の物と現在のそれを区分する特徴になっています。

 

・「P」の指標
この系列を考えるとき乳白色のビニール素材も手がかりで、第二次大戦オマージュモデルでは背面に大きくこの素材がスペースを占めているのが特徴で、表側には"Prazisionsinstrument"の丸いマークが付きます。

f:id:afcamera:20190609030108j:plain

f:id:afcamera:20190609030123j:plain

この素材は第二次大戦オマージュモデルで印象的なのですが、それらと強い関わりをもつ「M」氏あるいは「SK」氏による現在のeBay個体からは失われているものの一つです。

後期の個体ではこのように派手な使われ方はしませんがライカやそれに従ったライカコピー機の特徴でもある底蓋裏側のフィルムカット仕方の表示などで使用を確認できるようです。


・「Δ」の指標
件の系列のフェイクライカのデザインが第二次大戦オマージュから離れた後に現れる指標です。シンプルで落ち着いた佇まいのフェイクを作成していて、その完成度は彼の手によるモデルが国内某店で"ライカ"として販売されてしまった例が確認できるほどです。

彼が係わって以降の件の系列のフェイクライカの塗装はツヤありのブラックからマットブラックに変わります。

f:id:afcamera:20190609030252j:plain

f:id:afcamera:20190609030309j:plain

また、最晩期のカッタウェイモデルの内部には彼の手書きと思われるサインが確認できます。


・「SMK」の指標
今のところ手元の個体に確認できるうちで一番古いのはこちらで報告した歴史的な参照元を持たない軍艦部切断目測モデルの巻き上げノブに現れる古拙な「8MK」で「@」氏と同時に出現します。

photoworks.hatenablog.com

むしろ完成度が高まった後期の個体での印象が強く、二次大戦オマージュ機と後期の個体の関係性に一時疑いをもった理由でもあります。

f:id:afcamera:20190609030729j:plain

f:id:afcamera:20190609030743j:plain

しかしtwitter上でJun Sugawaraさんからのご報告を受けて第二次大戦オマージュ機にも現れることがわかりました。

 また「@」氏のカッタウェイモデルの初期と思われる個体にも登場しているのが確認でき「@」氏との関連が読み取れるのは既出の通りです。

 

・未確認の指標
他に未確認の指標的なものとして"G(○に囲まれたものとそうでないもの)""S""SM"(SMK氏か?)などがあります。

 

・カラーリングをマネジメントした人物とそれぞれの関係性
さて、これも未確認の指標と言えるかも知れませんが、件の系列を考えるときカラーリングがひとつの手がかりかもしれないと考えていて、黒を基調にオレンジがかった赤、或いは濃いオレンジをあしらったものが統一したカラーになっているように思えます。

eBayで現在観測される「M」氏あるいは「SK」氏の手によると思われる個体は黒地に白を基調としていて、全体のイメージが違います。このあたりに当時この系列のイメージを統一してマネジメントしていたと思われる人物の存在が示唆されるように思われるのです。

今のところボンヤリ考えているところとしては何名かの個別に活動していた職人が一時それぞれの強み(外装・内部機構等)を持ち寄って共同作業をしたものと思われて、ただ主に第二次大戦オマージュ機をつくったM氏・SK氏は途中で離脱し、入れ替わりでΔ氏が入ったのではないかと想像しています。

もちろんこれは全て仮説ともいえない思いつきのレベルの代物でいつ翻ってもおかしくない根拠薄弱なものであることは最初に述べたとおりです。

 

・2019年6月現在のeBayフェイクライカ事情
また上述のように2019年現在にeBay上で観察できるフェイクライカには「M」氏・「SK」氏との関係性が読み取れるのものがあります。明確な指標はないもののカッタウェイモデルの肉抜きの仕方は明確に「@」氏との関連性を示唆するのですけれども、そこは未確認です。

www.ebay.com

ただ、現在eBayで流通している個体にあまり興味がわかないというのが正直なところで、それは基本的に過去のデザインの再生産であること、新しく追加されたり変更されたりしたレタリング部分が間延びして大量生産のやっつけ仕事の感があること、そして外見の装飾にとどまり、基本的に内部の機構に手が入っていない(カッタウェイモデル除く)ことあたりが理由なのです。

しかし、一部に当時は見られなかったデザインなども出現しているので継続的に観察していきたいとは思っています。