書肆萬年床光画関係資料室

写真史や撮影技術、カメラ等について研究趣味上のメモ置き場

米谷紅浪「画題に就て」(永見徳太郎『夏汀画集』(1912年)への寄稿)

永見徳太郎の『夏汀画集』には徳太郎(夏汀)の挨拶に続いて八名の寄稿があります。そこに並ぶ顔ぶれは郷土の関係者と写真関係者に大きく分かれますが、故がついていることからもわかるように将来を嘱望された画家であり、徳太郎と同世代の渡邊よ平(渡辺与平)はこの年(1912)に急逝しています。

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八先生へ
 
此畫集を発行せんとするに當り左の諸先生達に御願ひして厚き同情を得て有益なる記事を御送り下さつた事は難有御禮申します
春に發行しようと思ふていろいろと急ぎましたけれども、いろんな事情の爲めに残念乍ら秋に延びました罪は御許し下さい

夏汀生

 

故 渡邊よ平 先生
三宅克己 先生
森長瓢 先生
坂井犀水 先生
宗得蕪湖 先生
米谷紅浪 先生
吉野誠 先生
淺野金兵衛 先生

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先の夏汀画集序文の項でも述べたように、米谷紅浪は寄稿のなかで薄雷山(薄恕一)の「雷山画集」について触れているのですが、当時の関西の雰囲気の記録でもあり、また彼の画題へのこだわりが伝わってくるのが興味深いのです。ただ、余程の長文であったのか中略・後略があるのが残念なところです。ひょっとして長崎県歴史博物館に寄贈されている永見の書簡集の中に残っていたりしないのか、と思うのですけれども…

候文で句読点もないため慣れないと読みにくいところがあります。そのうち口語訳をつけようと思います。

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畫題に就て

米谷紅浪

前略
小生は貴兄と同じく或は一層若きカメリストにして浪華寫眞倶樂部中の最年少者に御座候従つて斯界に未だ日淺く不熟の技は到底過當なる御讃詞に價せざる可きを恥ずる者に御座候今般夏汀畫集御發行の由何よりの御事と存じ候過去幾年に捗る趣味多き而して愉快なる御苦心を以て滿されたる畫集の若葉風の下に繙かれたる時御快心の程さこそと御察し申上候當地にては先年薄君の雷山畫集を發行せられたるのみにて其後同人間に幾多の計畫を聞しも未だ[中略]とまれ貴畫集の斯界同好者に對する甚大なる反響、新しき趣味に充滿せる最良の参考書として小生は樂んで發梓の日を待つ者に御座候

小生は畫題に對し深き趣味を有する者に御座候凡そ畫として構圖よりも調子よりも感じの最もよく現れたる者が最良の價値ある者とすれば随って畫題に對し重大なる注意を要するや必然にして調和せざる畫題の爲め折角の名作も可惜何等の威を引起さざる例も決して起からず候此意味に於て單に風景等といふ漠然たる畫題の下に發表せらるヽ事は寫眞として最も趣味多き畫題にする研究を無視せられたる者として小生は絶對に反對を唱ふる者に御座候然し乍ら畫に對するシックリ合った畫題の選擇に随分困難なる事にて寫眞文學?に多大の研究を要せざれば能はざる事と存じ申候而して小生は畫題研究主義者として常に甚しき不足を感じ居る小生の貧弱なる頭脳を呪ふ者に御座候
何だか分らない事を長々として書き連ね御目をけがし申候

永見徳太郎『夏汀画集』(1912年)序文

永見徳太郎が1912年に自費出版した写真集『夏汀画集』の序文を起こしました。徳太郎当時22歳。浪華写真倶楽部の「写真界」等に投稿を繰り返していた時期で、印刷は同倶楽部の後援でもある桑田商会。なお、発行は奥付でも1912年12月15日となっているのですが、今回底本とした長崎歴史文化博物館所蔵本(浅野金兵衛旧蔵本)は筆書きで「大正二年三月発行」と修正されており、そちらが正しい発行日なのかも知れません。

これが重要になってくるのは、のちに『珍しい写真』序文で永見が述べるように、この『夏汀画集』には日本で最初の個人写真集という説があって、実際戦前の写真界の一部でそのように認識されていたらしいことが当時の座談会などからも分かるのですが、この『夏汀画集』に寄せられている米谷紅浪の文章の記述によるならば、どうも薄恕一(薄雷山)の『雷山画集』が先行するらしいのです。

永見はこのあと写真史家としては別として一時作家活動からは距離を置いていたのもあり、そこで記憶違いが起きたのかも知れませんし、また新興写真とは距離を置いていたように思いますが、実は芸術写真の時代から戦中まで中央で活動を続けた写真家というのは少ないので彼の認識が広がってしまったと言うことかも知れません。

そもそも誰が最初かということは重要で無く、先ほどの米谷の寄稿文のなかの「当地の同人間に幾多の計画聞きしも未だ」という記述からも、芸術写真が隆盛を迎えて作家個人の作品を個展あるいは作品集として発表しようという雰囲気は既に同時代に横溢していたし、未だ知られない同時期の写真集はまだある可能性がありそういう状況を踏まえて登場したうちの一冊であったと捉えた方が建設的に思えます。

米谷含めた寄稿文のうちいくつかはいずれ起こしたいと思います。

 

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思ひ出のまゝ

永見夏汀

* 仮名遣いや句読点の用法が定まっていませんがなるべく原文のままに起こしています。一部書体や繰り返し記号などPC上では表しにくい部分、行末の句読点の省略などは適宜補っていますのでご承知おきください。

僕が寫眞を初めたのは丁度今から十年前の事で其頃は高等小學校の白兒であった、母サンが大坂に行かれた時親戚の人から古い器械を僕にと云ふて渡されたそうぢや。

元來僕は五ッ六ッの頃から赤鉛筆を握って、鳩ポッポーや御馬ハイハイのいたづらがきをしたり又幻燈が大の好きで近所の朋輩を集めて。繪の寫るのをみては此上もない樂みとしてをった位だから、寫眞銅版などは何百枚も集めて學校から歸へると其れと睨みっこしてゐた、で幸ひ器械が手に入ったので天にも昇ると云ふ心もちがした、明日と云はず其晩からマグ子ッシュームをたいて光りに驚かされた、其頃は只寫眞術なるものは器械を組立て鏡玉の蓋を取れば寫るものだと云ふ單純な考へであった、ので夜間の試は勿論物になる筈はない。

暗いルームで赤い光線を全身にあびて或希望をいだきつヽバットを抔と云ふのは何となしに心地よい感がした、而してメートグラス、紫や靑の藥を量ったり、ピーオーピーを六ヶ敷プリンチングヲブペーパーとかウエリントンブロマイドとかの語をくりかへしては普通の人より一増気がきいた様であった、それからと云ふものは閑さへあれば寫眞いぢくりばかしをしてゐた。

其頃親類に某と云ふ兄サンが寫眞をやって居られたから此兄サンと瀧澤氏の寫眞術とを師として!、今考へると此兄なる者の技術があやしなものであった、失敗又失敗をつゞけたけれども一向物にならんのでアキが來て殘念乍ら中止して器械には微が生へると云ふ始末。

日露戰爭の寫眞等を見ては兵隊の走つたり砲彈の破裂する瞬間がよく撮れるものとシキリに感心してた。 

全く寫眞から遠ざかった三四年後に宮島に行たっ事がある、其時若い人がシキリと大鳥居を寫してゐられた、僕も寫真を上手にやるなら今度の旅の樣な時にはさぞ面白い愉快な事だろうと考へた而して寫眞屋の前を通る時いつもこんな事が胸に浮ぶ。

「器械や器具などの設備は寫眞屋より足らぬだろうけれども、一増研究して見たら一枚位滿足なのが出来る筈」と、

學校も小學校を終り商業校に生徒となり、以前よりは餘程何事も解する事が早くなり再び寫眞なる術を初めた、寫眞趣味なるものが次第次第に面白くなって一も寫眞二も寫眞と云ふ樣になってきた。僕は小さい時から趣味を廣くもち其等の多くを研究しようと云ふ事を思ふて居た、而して最も心に適當したのが文藝趣味である、其研究も一寸では氣が済まぬから深く深くさぐる丈さがして見ようと覺悟して居る、而して負ず嫌いな性質として百年も二百年も、はた數億年の後の人々が「昔々大昔の日本と云ふ國に寫眞と云ふものがあった時代に下手で、無暗に力んで居た男があって其名が何んでも永見夏汀とかと云ふて居ったそうぢや云々」と、此宇宙界の中に少しでも名を残して死にたいとシキリと考へて居る。

それで早く一口に云へば寫眞界中に何か變つた新らしい試み、或は何か為になる事柄として自分の名を人々の記憶に留めたいと云ふ野心があるのだ。

ので此畫集がそれらの導火線ともなつて大に寫眞界の何かの為になる樣であるならば大滿足此上なしである。

僕は兼て美術寫眞なるものが世間一般の人に知られる樣にしたいと考へてゐるが、寫友諸君の或部分の人々の如きは變な考へを以つて一向に努力しない、殊に當地長崎の如きは昔時は日本中の一番ハイカラの地であつたのに今では寫眞界の振はないのみ、衰へて行きつヽあるのではない?故人だけれども内田九一、上野彦馬の二氏は寫眞界の大偉人として世間から尊敬を受けて居るではないか。こんな大寫眞家を出した現今の長崎否九州地方は特に振はない事甚しい!長崎、門司等は要塞地でもあろうけれども僕は此振はない九州を今一度關西關東地方の樣にはゆくまいが九州の美術寫眞界を盛大にしたいと希望してゐる。

自分一人で勇氣の努力のと叫んで居るが他の連中が真面目でないから困つて居る。

いつも汗水になつての得物を暗室の中ちにもつてゐつてみると例の失敗である失敗の種板は山程あると云ひ度いが成功とも云ふものはいくらさがしても見當らぬけれども展覧會や品評會で選にあづかつたり又思出多きものを此處に集めたものが此畫集である

勿論僕は未だ研究の深くない物だが此後個人展覽會或は畫集の發行をして諸大家及先輩諸君の方々に審査や、批評をしていたゞいて貰って益々研究をしようと考へてゐる。

それで今度出過ぎた事か知らんが!或人は下手なクセに云ふかも知れないが!畫集を發行して見た譯である、何卒か諸君の此後とても御指導を願ひ又永々的に、一時的でなく竹馬の友同樣に御交りを願ひたい。

終りに斷って置くが僕は決して筆の人でないから此本の中に字の誤りや文章の訂正があるとしても決して笑つてて下さらぬ樣に希望する。

大正元年十一月

海外写真界の現状 ②(フォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収)

先だってから紹介しているフォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収の記事で「写真界知識編」コーナーの一つ無署名記事により  著作権保護期間は満了

前回紹介した「海外の有名写真家を紹介して欲しい」という質問に対する回答のコーナーにの続きで、同様に「外国の写真雑誌にはどういうものがありますか」という質問に対するていで紹介していく。

本来は前回の記事にそのままつなげるのが良かったろうが、力尽きたというのが真相。雑誌名の書き起こしはしたもののそれぞれの詳細を確認したわけではないので間違いがあったらご容赦を。

 

外国の写真雑誌にはどういうものがありますか

今日比較的容易に見られるものには、やはりアメリカの雑誌が多いようです。その中でも一般に知れわたっているのは

 POPULAR PHOTOGRAPHY

で、題名の示すように大衆むきの写真雑誌で技術記事を多くとりあげています。カメラ毎日誌が提携して、独占的にその作品や記事を紹介しているので、ご存知の方も多いことでしょう。毎年一回開いているフォトコンテストには、わが国から多数入選した人もあるので、なんといっても知れわたっています。

 MODERN PHOTOGRAPHY

は、いわば高級写真雑誌で、高度の作品を発表しているので有名です。また

 U S CAMERA

は、メカニズムを主にとりあげた雑誌です。

いずれも月刊誌で、それぞれ特長をもったものですが日本の写真雑誌のような体裁ではなく、口絵と記事を組合わせた形式なので非常に見やすくなっていることと、広告が多いことが特長でしょう。

イギリスでは週刊、年刊などをあわせて計五冊発行されています。

 BRITISH JOURNAL OF PHOTOGRAPHY(週刊)

 FUNCTIONAL PHOTOGRAPHY(月刊)

 JOURNAL OF PHOTOGRAPHIC SCIENCE(隔月)

 PHOTOGRAPHIC ABSTRACT(季刊)

 PHOTOGRAPHIC JOURNAL(月刊)

またドイツも数多くあり、中でも

 LEICAFOTOGRAPHIE

は月刊で、ライカに関した紹介や有名写真家の作品を発表しています。

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 PHOTOTECHNIK UND-WIRTSCHAFT(月刊)

は、メカニズムを主にとりあげたもので、わが国にも愛読者が多いようです。その他には

 DEUTSCHE_AUSGABE(隔月)

 LICHTTECHNIK(月刊)

 PHOTOMAGAZIN(月刊)

などが発行され、東独では年二回発行の

 PHOTOPHYSIK UND PHOTOCHEMIE

があります。

で、スイスでは美麗な印刷を誇っている月刊誌

 CAMERA

があります。広く世界の写真家の作品をとりあげており、わが国の写真家の特集も企画されているとのことです。

 PHOTOGRAPHISCHE KORRESPOMDEMZ(月刊)

オーストリアの写真雑誌です。

以上が海外写真雑誌の概略ですが、その他にわが国ではグラフ雑誌の部類に入る「ライフ」なども写真雑誌と銘打って出されています。ライフはすぐれたスタッフをようしているので、常にすぐれた写真を発表しているので有名です。

いままでにのべた以外のファッション雑誌である「ヴォーグ」などにも、優秀なカメラマンのすばらしい作品が発表されています。

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海外写真界の現状 ①(フォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収)

先だってから紹介しているフォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収の記事で「写真界知識編」コーナーの一つ無署名記事により  著作権保護期間は満了

「海外の有名写真家を紹介して欲しい」という質問に対する回答という設定で編集されたコーナーで、1958年時点で10ヶ国の180人にも及ぶ写真家を紹介している(名前だけならさらに20人以上があげられている)。もちろん、「当時の日本写真界からみた海外写真界」ということには留意が必要だ。

10ヶ国にはそれぞれごく短い概況がつくのが当時の理解としても興味深い。なお、中国とソビエトの写真家は含まれないが、大国ながら資料がなく紹介できないことを断っている(ソ連との国交回復は1956年末。中国との国交正常化は1972年を待たねばならない)。しかしながら中南米・東欧・中東・アジア・アフリカには言及がないことは注意しておきたい。

おそらく収録された写真家と解説のある程度は執筆者が重なっていると思われる平凡社の『世界写真家全集』(1956~59)に典拠があるのではないだろうかと考えているが、そこからの抜き出し方に編集の意図が見えてくるだろうからいずれ確認してみたい。

さまざまな限界はあるにしろ、これだけ世界が狭くなったという現代に、それぞれの国の動きをフォローし興味深い写真家を紹介できるだけの編集部・ライターが、休刊した写真誌にどれだけいたろうか。

もっとも、この増刊を発行したフォトアート誌も長く続いたとはいえ80年代は迎えられなかったのだから、そのような海外の動きが読者にどれだけ同時代を共有するものとして届いていたのか、届いていたとしてもそれはいつごろまでかというのは別に問わないといけない話ではあるのだろう。

なお、紹介されている各国別の写真家の数を紹介順に載せておく。アメリカが圧倒的なのは当然で半分以上を占めるが、五十音別でも紹介作家数でもないにも係わらず、ドイツを冒頭で紹介し北欧から最後アメリカに至る並びには、編集者の思いのようなものが透けて見えるようにも思われる。

・ドイツ(26名)
 うち女性1名。名前だけならあと8名紹介されている。
ノルウェー(2名)
・オランダ(5名)
 うち女性1名。名前だけならあと4名紹介されている。
スウェーデン(2名)
 名前だけならあと2名紹介されている。
・イギリス(8名)
 名前だけならあと8名紹介されている。
オーストリア(2名)
 うち女性1名。
・スイス(8名)
・フランス(24名)
 うち女性5名
・イタリア(7名)
アメリ(96名)
 うち女性15名

女性をカウントしているのは個人的な関心による。人名だけの紹介などでは取りこぼしがあるかもしれない。

また、この180名のうちには数名の故人が含まれている。

・ユージェーヌ・アッジェ(ウジェーヌ・アジェ 仏 1927没)
・アルフレッド・スティーグリッツ(米 1946)
パウル・ウォルフ(パウル・ヴォルフ 独 1951没)
・ウエルナー・ビショーフ(瑞 1953)
ロバート・キャパ(米 1954没)
・イーラ(米 1955)
・デーヴィッド・シーモア(米 1956)

そも戦前に逝去した作家でここにあげられているのはアッジェ(アジェ)しかいない。特別な扱われ方をしているわけではないが、特別視はされていたのだといえるだろう。

特集の同時代性がよく現れているが、アウシュビッツで虐殺されたザロモンはおらず、またムンカッチ(ムンカーチ)も見当たらないが、レンガーパッチュとウォルフ(ヴォルフ)は入っているあたりに過渡期の興味深さがある。なお、このあと急速に忘れられていくのはザロモン、ムンカッチではなくウォルフである。

元の雑誌の紙もよくなく紙焼けが激しい。また印刷の質も良くないため、文字を起こすにあたっては当然読み間違いもあるものと思われるので、利用する際はスキャン画像中の原語表記を確認していただきたい。

今後『世界の写真家101』(1997,新書館)所収の作家との比較や原語表記の追加、音写の修正、プロフィールの確認等もしていきたいが今後の課題としておく。(2021/05/26)


海外写真界の現状

外国の有名な写真家を各国別にして紹介ねがいます

日本は世界の中でも、有数の写真国であって、したがって写真家のレベルも、けっして低いものではありません。

しかし日本では写真家の発表の場、つまりマーケットが、外国にくらべて狭く、そういったことから、写真家の数は多い方だとは申せません。もっともこの比較はアメリカとかフランスとかにくらべた場合であって、例えばスウェーデンやノールウェーあたりにくらべれば、けっして遜色がないといえます。

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海外の写真界で最も広大なスケールをもつ国は、いうまでもなくアメリカであって、それだけにおびただしくすぐれた写真家がおり、世界を舞台として活躍に活躍をつづけております、ついで芸術の国、フランスでありますが、フランスはいわばヨーロッパの芸術の粋を集めて、秀れた写真家を輩出しております。それにイギリスは、写真史上からいっても重要な写真国で、この三国は特に顕著な写真王国を形成しています。

ここではこういった各国の著名な写真家を網羅したものなのですが、ソビエトや中国など大国でありながら、その詳細については資料不足のため発表できなかったものもありますからその点はご了解ください。

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さて海外の写真家の団体ですが、現在最も活発な活動をしているのは「マグナム」(MAGNUM)であります。団体というよりは写真通信社でありますから、組織というほうが正しいかも知れませんが、ともかく各国の優秀な写真家がこの組織のメンバーで、創立は一九三六年ですから、もうかれこれ二十余年が経過しています。現在までに有名なロバート・キャパとウェルナー・ビショーフ、それにデーヴィット・シーモアの偉大な写真家を失ったことは記憶に新しいものですが、ともかく「マグナム」のスタッフはこういった生死の間で、きびしい報道写真を撮りつづけています。

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つぎに特筆しなければならないのは「ライフ」のスタッフカメラマンです。このグラフ誌の擁する写真家のすばらしさはもう説明するまでもなく、一九五八年四月に日本でも開催された「ライフ傑作展」を見て、いまさらながらその卓越したカメラワークに驚きました。


ドイツ

ドイツにはこの他にシュトレロウやシャーゲスハイマー、トルエール、ゼーベンス、フレーター、ウィントシュトッサー、エンゲル、ラチなどかなりベテランの写真家がいる。

・ エーリッヒ・アンゲネント
・ ハーバート・バイヤー
・ フリッツ・ブリル
・ ジゼーラ・ビューズ
・ ハンス・コルデス
ワルター・ラウチンバッハー
・ ハイン・エンゲルスキルヘン
ジークフリート・エンケルマン
パウル・フリース

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・ マックス・シェーラー
・ ハインツ・ハーエク・ハルケ
・ ケル・ヘルマ・ピーターセン
・ ペーター・ケートマン
・ オスカー・クライゼル
・ ベルント・ローゼ
・ モホリー・ナギ
・ ハインツ・ミュルラー・ブルンケ
アルバート・レンガー・パッチェ
・ クルト・レーリッヒ

・ フェー・シュラッパー
・ トーニ・シュナイダース
・ オット・シュタイナート
・ ウォルフ・シュトラッヘ
・ アルフレッド・トリチュラー
・ フアルトウル・フォン・シュウエルフューラー
パウル・ウォルフ


ノールウェー

北欧の中ではスウェーデンやオランダほど写真が盛んではないが、これは主として歴史上にもとづくものかどうかは別として、写真家の少ないのはいささか淋しい感じがする。

・ ペール・クリストフェルセン
・ ロルフ・モルテンセン

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オランダ

写真の歴史としてはけっして古い方ではないが、北欧の中ではオランダはスウェーデンと同様程度の発達ぶりである。オス、オールトハイス、イエッセ、コッペンスも有名。

・ マリア・オーストリア
・ ヘンク・ヨンケル
・ アールト・クライン
セミ・ブレッセル
・ ケイス・スヘイレル


スウェーデン

オランダと共に歩んできたスウェーデンではある。ユーハンソン、マルムベイの二人も優秀な写真家として知られている。

・ ロルフ・ウィンキスト
・ グスタヴ・ハンソン


イギリス

アウアーバッハ、カッシュ、ハウィンデン、サシッキー、ホフキンス、ハットン、メーン、マックベイン、などがこの他の写真家として知られている。

・ バロン
セシル・ビートン
・ ブライアン・ブレイク
・ ビル・ブラント
・ バート・ハーデイ
・ ホッペ
・ アドルフ・モラート
ジョージ・ロジャー


オーストリア

オーストリアの写真は一八三九年にドイツから入ってきたといわれている。左の二人の写真家以外に、エルンスト・ハースに多大の影響をうけているといわれている。

・ エーリッヒ・レッシング

・ インゲ・モラート

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スイス

アメリカやフランス、またイギリスに比肩し得るほどの盛況ぶりをもつのがスイス写真界ではあるが、特に素晴らしい写真家を輩出している。

・ ウエルナー・ビショーフ
ロバート・フランク
・ ルネ・グレブリ
・ エルンスト・ハース
・ ユルク・クラーゲス
・ ペーター・メッシュリン
・ ゴッタルト・シュー
・ クリスチャン・シュタウブ


フランス

芸術国フランスの写真は、文字どおり世界でも卓越したものである。ここにあげきれない写真家も多数あって残念ながら割合した。

・ ユージェーヌ・アッジェ
・ イジス・ビデルマナス
エドゥアール・ブーバ
ブラッサイ
アンリ・カルティエ・ブレッソン
・ ジャン・フィリップ・シャルボニエ
・ リューバン・ド・レイ
・ ジャン・ジャック・デケール
・ ジャン・デュゼード

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ロベール・ドアノー
・ ノラ・デューマ
・ ルネ・ジャック
・ エルジー・ランドー
・ テレーズ・ル・ブラ
・ セルジュ・リド
・ ウィリアム・メーワルド
マン・レイ
・ マルク・リブー
・ ウィリー・ロニ

・ エマニュエル・スーゼズ
・ モーリス・タバール
アンドレ・テヴネ
・ アグネス・ヴァルダ
・ サビーヌ・ウェイヌ


イタリア

イタリア写真界の隆盛ぶりは主として戦後のことである。戦前においては専ら絵画の傾向を帯びたサロン写真であったが、現在の写真はもっと飛躍的な発展を示している。

・ マリア・デ・ビアージ
・ ピエロ・ディ・ブラージ
ジーノ・ボロニーニ
・ マリオ・フィナッツイ

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・ フェデリコ・ガローラ
・ アリーゴ・オルシ
・ フルヴィオ・ロイテル


アメリ

何といっても大国である。アメリカのジャーナリズムは最もスケールが大きい。したがって写真家の檜舞台ともいうべきそのマーケットも著しく大きい。写真家の秀才も他を圧倒している。

・ ベレニース・アボット
・ アンセル・アタムス(注 アンセル・アダムスの誤標記)
・ リチャード・アヴェドン
・ ルース・バーナード
・ アーウイン・ブルーメンフェルド
・ マーガレット・バークホワイト

・ ウィーン・バロック
・ ジェームス・バーク
・ コーネル・キャパ
ロバート・キャパ
エドワード・クラーク
・ ラリー・コルウエル
・ ジェリー・クック
・ ラルフ・クレーン
・ イモージェン・カニンハム
アンドレ・ド・ディーンズ

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・ ルーミス・ディーン
・ マックス・デスフォー
・ ロバート・ディスレリ
・ ジョン・ドミニス
・ ハロールド・イー・エッジャートン
・ アルフレッド・アイゼンステット
・ エリオット・エリソフォン
・ エリカ
エリオット・アーウィット
・ ルイス・フォーラー

・ ナット・ファイン
アンドレアス・ファイニンガー
アルバート・フェン
・ トウルード・フライシュマン
・ バートン・グリン
・ フリッツ・ゴロ
・ アラン・グラント
・ ミルトン・グリーン
・ モリス・ジャッフ
・ サンフォード・ロス

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・ フィリップ・ハルスマン
・ フリッツ・ヘンレ
・ ターナ・ホーバン
・ ジョージ・ホイニンゲン・ヒューネ
・ エール・ジョエル
・ ハリー・ケー・シゲタ
・ コンスェーロ・カネーガ
・ ユーサフ・カーシュ
・ マーク・カフマン
アンドレ・ケルテス

・ ドミトリ・ケスル
・ ウォーレス・カークランド
・ ドロシー・ラング
・ リサ・ラーセン
・ ニーナ・リーン
・ トーマス・マッカヴォイ
・ レオナード・マッコム
・ フランシス・ミラー
・ ウェーン・ミラー
・ リゼット・モデル

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・ バーバラ・モーガン
・ ラルフ・モース
カール・マイダンス
・ アリク・ネーボ
・ アーノルド・ニューマン
・ ルース・オーキン
・ ホーマ・ページ
ゴードン・パークス
・ アーヴィング・ペン
・ ナット・ファルブマン

・ ジョン・ローリングス
・ ハル・ライフ
・ アーサー・ロスタイン
・ マイケル・ルージエ
・ ウォルター・サンダース
・ フランク・シャーシェル
・ ジョー・ジャーセル
・ ポール・シュッアー
・ デーヴィッド・シーモア
・ ジョージ・シルク

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ユージン・スミス
・ ハワード・ソシュレク
・ ピーター・スタックボール
エドワード・スタイケン
・ デニス・ストック
・ ポール・ストランド
スザンヌ・サース
・ ジョン・ヴァション
・ ウィリアム・ヴァンディヴァート

・ グレイ・ヴィレット
・ ロバート・ケリー
・ ハンク・ウォーカー
・ ドーディ・ウォーレン
・ トッド・ウェッブ
・ ウィージー
・ ブレッド・ウェストン
エドワード・ウエストン
・ ジェームス・ウィットモアー
・ イーラ

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AERA.dot/『アサヒカメラの90年』 勝手リンク集

AERA.dotの連載「アサヒカメラの90年」(鳥原学 全24回  ※元はアサヒカメラ誌上での連載)についてもまとまった目次がなく、また設定されているタグが機能しない(!)という状況で、検索するにもこの記事の存在を知らなければたどり着けないというというありさまなので、まずは自分の為に勝手リンク集を作りました。

これらの記事もいつまで維持されるのかという感じではあり、またリンク先が変更されればそれまでですが、こういう記事がそこにあったという情報があれば将来的にWebArchiveあたりからもたどれるでしょうから痕跡を残しておくことにします。


[連載]アサヒカメラの90年 第1回 (2016/03/03 11:00)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第2回 (2016/03/09 11:00)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第3回 (2016/03/15 12:00)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第4回 (2016/04/19 11:00)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第5回 (2016/05/19 17:37) アサヒカメラ

dot.asahi.com

 


[連載]アサヒカメラの90年 第6回 (2016/06/03 16:05)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第7回 (2016/06/21 10:52)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第8回 (2016/07/20 11:55)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第9回 (2016/08/22 16:40)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第10回 (2016/09/21 17:05)

dot.asahi.com

 


[連載]アサヒカメラの90年 第11回 (2016/10/20 10:14)

dot.asahi.com

[連載]アサヒカメラの90年 第12回 (2016/11/25 14:55)

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