光画図書室閉架書庫

写真史や撮影行為にまつわるあれこれを放り込む納戸。

海外写真界の現状 ①(フォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収)

先だってから紹介しているフォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収の記事で「写真界知識編」コーナーの一つ無署名記事により  著作権保護期間は満了

「海外の有名写真家を紹介して欲しい」という質問に対する回答という設定で編集されたコーナーで、1958年時点で10ヶ国の180人にも及ぶ写真家を紹介している(名前だけならさらに20人以上があげられている)。もちろん、「当時の日本写真界からみた海外写真界」ということには留意が必要だ。

10ヶ国にはそれぞれごく短い概況がつくのが当時の理解としても興味深い。なお、中国とソビエトの写真家は含まれないが、大国ながら資料がなく紹介できないことを断っている(ソ連との国交回復は1956年末。中国との国交正常化は1972年を待たねばならない)。しかしながら中南米・東欧・中東・アジア・アフリカには言及がないことは注意しておきたい。

おそらく収録された写真家と解説のある程度は執筆者が重なっていると思われる平凡社の『世界写真家全集』(1956~59)に典拠があるのではないだろうかと考えているが、そこからの抜き出し方に編集の意図が見えてくるだろうからいずれ確認してみたい。

さまざまな限界はあるにしろ、これだけ世界が狭くなったという現代に、それぞれの国の動きをフォローし興味深い写真家を紹介できるだけの編集部・ライターが、休刊した写真誌にどれだけいたろうか。

もっとも、この増刊を発行したフォトアート誌も長く続いたとはいえ80年代は迎えられなかったのだから、そのような海外の動きが読者にどれだけ同時代を共有するものとして届いていたのか、届いていたとしてもそれはいつごろまでかというのは別に問わないといけない話ではあるのだろう。

なお、紹介されている各国別の写真家の数を紹介順に載せておく。アメリカが圧倒的なのは当然で半分以上を占めるが、五十音別でも紹介作家数でもないにも係わらず、ドイツを冒頭で紹介し北欧から最後アメリカに至る並びには、編集者の思いのようなものが透けて見えるようにも思われる。

・ドイツ(26名)
 うち女性1名。名前だけならあと8名紹介されている。
ノルウェー(2名)
・オランダ(5名)
 うち女性1名。名前だけならあと4名紹介されている。
スウェーデン(2名)
 名前だけならあと2名紹介されている。
・イギリス(8名)
 名前だけならあと8名紹介されている。
オーストリア(2名)
 うち女性1名。
・スイス(8名)
・フランス(24名)
 うち女性5名
・イタリア(7名)
アメリ(96名)
 うち女性15名

女性をカウントしているのは個人的な関心による。人名だけの紹介などでは取りこぼしがあるかもしれない。

また、この180名のうちには数名の故人が含まれている。

・ユージェーヌ・アッジェ(ウジェーヌ・アジェ 仏 1927没)
・アルフレッド・スティーグリッツ(米 1946)
パウル・ウォルフ(パウル・ヴォルフ 独 1951没)
・ウエルナー・ビショーフ(瑞 1953)
ロバート・キャパ(米 1954没)
・イーラ(米 1955)
・デーヴィッド・シーモア(米 1956)

そも戦前に逝去した作家でここにあげられているのはアッジェ(アジェ)しかいない。特別な扱われ方をしているわけではないが、特別視はされていたのだといえるだろう。

特集の同時代性がよく現れているが、アウシュビッツで虐殺されたザロモンはおらず、またムンカッチ(ムンカーチ)も見当たらないが、レンガーパッチュとウォルフ(ヴォルフ)は入っているあたりに過渡期の興味深さがある。なお、このあと急速に忘れられていくのはザロモン、ムンカッチではなくウォルフである。

元の雑誌の紙もよくなく紙焼けが激しい。また印刷の質も良くないため、文字を起こすにあたっては当然読み間違いもあるものと思われるので、利用する際はスキャン画像中の原語表記を確認していただきたい。

今後『世界の写真家101』(1997,新書館)所収の作家との比較や原語表記の追加、音写の修正、プロフィールの確認等もしていきたいが今後の課題としておく。(2021/05/26)


海外写真界の現状

外国の有名な写真家を各国別にして紹介ねがいます

日本は世界の中でも、有数の写真国であって、したがって写真家のレベルも、けっして低いものではありません。

しかし日本では写真家の発表の場、つまりマーケットが、外国にくらべて狭く、そういったことから、写真家の数は多い方だとは申せません。もっともこの比較はアメリカとかフランスとかにくらべた場合であって、例えばスウェーデンやノールウェーあたりにくらべれば、けっして遜色がないといえます。

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海外の写真界で最も広大なスケールをもつ国は、いうまでもなくアメリカであって、それだけにおびただしくすぐれた写真家がおり、世界を舞台として活躍に活躍をつづけております、ついで芸術の国、フランスでありますが、フランスはいわばヨーロッパの芸術の粋を集めて、秀れた写真家を輩出しております。それにイギリスは、写真史上からいっても重要な写真国で、この三国は特に顕著な写真王国を形成しています。

ここではこういった各国の著名な写真家を網羅したものなのですが、ソビエトや中国など大国でありながら、その詳細については資料不足のため発表できなかったものもありますからその点はご了解ください。

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さて海外の写真家の団体ですが、現在最も活発な活動をしているのは「マグナム」(MAGNUM)であります。団体というよりは写真通信社でありますから、組織というほうが正しいかも知れませんが、ともかく各国の優秀な写真家がこの組織のメンバーで、創立は一九三六年ですから、もうかれこれ二十余年が経過しています。現在までに有名なロバート・キャパとウェルナー・ビショーフ、それにデーヴィット・シーモアの偉大な写真家を失ったことは記憶に新しいものですが、ともかく「マグナム」のスタッフはこういった生死の間で、きびしい報道写真を撮りつづけています。

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つぎに特筆しなければならないのは「ライフ」のスタッフカメラマンです。このグラフ誌の擁する写真家のすばらしさはもう説明するまでもなく、一九五八年四月に日本でも開催された「ライフ傑作展」を見て、いまさらながらその卓越したカメラワークに驚きました。


ドイツ

ドイツにはこの他にシュトレロウやシャーゲスハイマー、トルエール、ゼーベンス、フレーター、ウィントシュトッサー、エンゲル、ラチなどかなりベテランの写真家がいる。

・ エーリッヒ・アンゲネント
・ ハーバート・バイヤー
・ フリッツ・ブリル
・ ジゼーラ・ビューズ
・ ハンス・コルデス
ワルター・ラウチンバッハー
・ ハイン・エンゲルスキルヘン
ジークフリート・エンケルマン
パウル・フリース

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・ マックス・シェーラー
・ ハインツ・ハーエク・ハルケ
・ ケル・ヘルマ・ピーターセン
・ ペーター・ケートマン
・ オスカー・クライゼル
・ ベルント・ローゼ
・ モホリー・ナギ
・ ハインツ・ミュルラー・ブルンケ
アルバート・レンガー・パッチェ
・ クルト・レーリッヒ

・ フェー・シュラッパー
・ トーニ・シュナイダース
・ オット・シュタイナート
・ ウォルフ・シュトラッヘ
・ アルフレッド・トリチュラー
・ フアルトウル・フォン・シュウエルフューラー
パウル・ウォルフ


ノールウェー

北欧の中ではスウェーデンやオランダほど写真が盛んではないが、これは主として歴史上にもとづくものかどうかは別として、写真家の少ないのはいささか淋しい感じがする。

・ ペール・クリストフェルセン
・ ロルフ・モルテンセン

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オランダ

写真の歴史としてはけっして古い方ではないが、北欧の中ではオランダはスウェーデンと同様程度の発達ぶりである。オス、オールトハイス、イエッセ、コッペンスも有名。

・ マリア・オーストリア
・ ヘンク・ヨンケル
・ アールト・クライン
セミ・ブレッセル
・ ケイス・スヘイレル


スウェーデン

オランダと共に歩んできたスウェーデンではある。ユーハンソン、マルムベイの二人も優秀な写真家として知られている。

・ ロルフ・ウィンキスト
・ グスタヴ・ハンソン


イギリス

アウアーバッハ、カッシュ、ハウィンデン、サシッキー、ホフキンス、ハットン、メーン、マックベイン、などがこの他の写真家として知られている。

・ バロン
セシル・ビートン
・ ブライアン・ブレイク
・ ビル・ブラント
・ バート・ハーデイ
・ ホッペ
・ アドルフ・モラート
ジョージ・ロジャー


オーストリア

オーストリアの写真は一八三九年にドイツから入ってきたといわれている。左の二人の写真家以外に、エルンスト・ハースに多大の影響をうけているといわれている。

・ エーリッヒ・レッシング

・ インゲ・モラート

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スイス

アメリカやフランス、またイギリスに比肩し得るほどの盛況ぶりをもつのがスイス写真界ではあるが、特に素晴らしい写真家を輩出している。

・ ウエルナー・ビショーフ
ロバート・フランク
・ ルネ・グレブリ
・ エルンスト・ハース
・ ユルク・クラーゲス
・ ペーター・メッシュリン
・ ゴッタルト・シュー
・ クリスチャン・シュタウブ


フランス

芸術国フランスの写真は、文字どおり世界でも卓越したものである。ここにあげきれない写真家も多数あって残念ながら割合した。

・ ユージェーヌ・アッジェ
・ イジス・ビデルマナス
エドゥアール・ブーバ
ブラッサイ
アンリ・カルティエ・ブレッソン
・ ジャン・フィリップ・シャルボニエ
・ リューバン・ド・レイ
・ ジャン・ジャック・デケール
・ ジャン・デュゼード

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ロベール・ドアノー
・ ノラ・デューマ
・ ルネ・ジャック
・ エルジー・ランドー
・ テレーズ・ル・ブラ
・ セルジュ・リド
・ ウィリアム・メーワルド
マン・レイ
・ マルク・リブー
・ ウィリー・ロニ

・ エマニュエル・スーゼズ
・ モーリス・タバール
アンドレ・テヴネ
・ アグネス・ヴァルダ
・ サビーヌ・ウェイヌ


イタリア

イタリア写真界の隆盛ぶりは主として戦後のことである。戦前においては専ら絵画の傾向を帯びたサロン写真であったが、現在の写真はもっと飛躍的な発展を示している。

・ マリア・デ・ビアージ
・ ピエロ・ディ・ブラージ
ジーノ・ボロニーニ
・ マリオ・フィナッツイ

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・ フェデリコ・ガローラ
・ アリーゴ・オルシ
・ フルヴィオ・ロイテル


アメリ

何といっても大国である。アメリカのジャーナリズムは最もスケールが大きい。したがって写真家の檜舞台ともいうべきそのマーケットも著しく大きい。写真家の秀才も他を圧倒している。

・ ベレニース・アボット
・ アンセル・アタムス(注 アンセル・アダムスの誤標記)
・ リチャード・アヴェドン
・ ルース・バーナード
・ アーウイン・ブルーメンフェルド
・ マーガレット・バークホワイト

・ ウィーン・バロック
・ ジェームス・バーク
・ コーネル・キャパ
ロバート・キャパ
エドワード・クラーク
・ ラリー・コルウエル
・ ジェリー・クック
・ ラルフ・クレーン
・ イモージェン・カニンハム
アンドレ・ド・ディーンズ

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・ ルーミス・ディーン
・ マックス・デスフォー
・ ロバート・ディスレリ
・ ジョン・ドミニス
・ ハロールド・イー・エッジャートン
・ アルフレッド・アイゼンステット
・ エリオット・エリソフォン
・ エリカ
エリオット・アーウィット
・ ルイス・フォーラー

・ ナット・ファイン
アンドレアス・ファイニンガー
アルバート・フェン
・ トウルード・フライシュマン
・ バートン・グリン
・ フリッツ・ゴロ
・ アラン・グラント
・ ミルトン・グリーン
・ モリス・ジャッフ
・ サンフォード・ロス

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・ フィリップ・ハルスマン
・ フリッツ・ヘンレ
・ ターナ・ホーバン
・ ジョージ・ホイニンゲン・ヒューネ
・ エール・ジョエル
・ ハリー・ケー・シゲタ
・ コンスェーロ・カネーガ
・ ユーサフ・カーシュ
・ マーク・カフマン
アンドレ・ケルテス

・ ドミトリ・ケスル
・ ウォーレス・カークランド
・ ドロシー・ラング
・ リサ・ラーセン
・ ニーナ・リーン
・ トーマス・マッカヴォイ
・ レオナード・マッコム
・ フランシス・ミラー
・ ウェーン・ミラー
・ リゼット・モデル

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・ バーバラ・モーガン
・ ラルフ・モース
カール・マイダンス
・ アリク・ネーボ
・ アーノルド・ニューマン
・ ルース・オーキン
・ ホーマ・ページ
ゴードン・パークス
・ アーヴィング・ペン
・ ナット・ファルブマン

・ ジョン・ローリングス
・ ハル・ライフ
・ アーサー・ロスタイン
・ マイケル・ルージエ
・ ウォルター・サンダース
・ フランク・シャーシェル
・ ジョー・ジャーセル
・ ポール・シュッアー
・ デーヴィッド・シーモア
・ ジョージ・シルク

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ユージン・スミス
・ ハワード・ソシュレク
・ ピーター・スタックボール
エドワード・スタイケン
・ デニス・ストック
・ ポール・ストランド
スザンヌ・サース
・ ジョン・ヴァション
・ ウィリアム・ヴァンディヴァート

・ グレイ・ヴィレット
・ ロバート・ケリー
・ ハンク・ウォーカー
・ ドーディ・ウォーレン
・ トッド・ウェッブ
・ ウィージー
・ ブレッド・ウェストン
エドワード・ウエストン
・ ジェームス・ウィットモアー
・ イーラ

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