書肆萬年床 光画資料室

写真史や撮影行為にまつわるあれこれ、またはカメラ等についてよしなしごとを放り込む納戸

Fed(I)のマウント金具を交換してLマウント互換にする話 その2

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※ 以下の記事は2014年の原稿を元に再構成したものです。ソビエトのカメラ・レンズ史または写真史については国内に信頼に足る文献は少なく、伝聞に基づいた記述があることをご承知おきください。

マウント金具をFed3のものと換えてしまったのでもうFed改とでも呼んだがいいのかもしれなくなったFed(I)ですが、実写までにはまだまだ関門があります。まずはフランジバックの調整です。この時点ではフランジバックが短いと推測されるのでFed3に入っていたスペーサーも全部放り込んだのですが、デプスゲージなどは持っていないので実写で確認するしかありません。さて前ピンか後ピンというところから調整が始まるわけですが、いったい何本のフィルムを消費することになるか…

操作しやすい信頼のジュピター8を付け、被写界深度が一番浅くなるF2.0に合わせて露出の問題でF2.0は使えずF4.0で試写をします。この時点では距離計がズレていると目されるのでファインダーは使わずレンズの焦点距離の指標で合わせながら目測で撮っていきます。

その結果です。(写っているのは絞りF4で試したもの)。

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下に見えているのはメジャーです。設定した焦点距離に合わせて手製の目印を移動させながら撮っていきます。

この写真から以下のことがわかります。

  • その1
  • Fed1のフランジバックが実用と見なしうる精度では合っていること。このやり方で一発で合ったというのはかなり奇跡的な話です。追加したスペーサーは2枚で計4枚のスペーサーが入っていますから0.2mm短かったということになります。
  • その2
  • シャッター幕が酷く劣化していて張り替えが必要なレベルなこと。この写真はなるべくマシなのを選んだのですが、他のはもう漏れているというかシャワーを浴びているというか。

そこでシャッター幕については急場しのぎの対策にかかります。見ての通りシャッター幕がボロボロです。この個体はヤフオクで"美品"という触れ込みのものを落札したのですけれども、日本語の怪しい業者でこの業者は2019年現在でも出品を続けているので注意が必要です。

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海外の「美品」は"一応動いている"というレベルのことがままあります。この辺りがソビエトカメラなんてまさしく動けばいいという感覚を生み出している遠因では無いかと思われて残念でなりません。

分解した時点で見るも無残に劣化したシャッター幕は確認していました。マウント金具から覗き込んだ時点でひび割れだらけでしたら期待していませんでしたが、これはヒドい。

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光を当ててみると、お前は「シャッター幕の仕事を果たす気があるのか!?」と言いたくなる勢いで光のシャワー状態です。むしろフランジバック確認用の試写の時点でよくあの程度で済んだものだというところですがそのあたりは撮ってみなければわからないところです。

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さて、最終的にシャッター幕を張り替えるしかありませんが、当座はこの幕を応急処置でも何とかしたい。こういうときはホームセンターや100円ショップを歩きながら考えます。水漏れ防止のシーリング材でも使おうかと思っていたところ、もっと簡便なものが見当たりました。化粧売り場のマニキュアです。それも黒。ある程度の伸縮性と耐久性、それからもちろん遮光性が期待できます。なにより安い。108円です。

同じく100円ショップで買ったメンディングテープでマスキングして、なるべく薄く塗りこんでいきます。

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塗ってはヘラで薄くのばし、光をあててはまだ漏れているところを探しては埋めていくという地道な作業でしたがマニキュアの速乾性には助けられました。それにしても百均のマニキュアの溶剤の臭いは強烈で、本当にこれは化粧なのか深刻に疑問を抱くレベルです(苦笑)。

この臭いは指先にちょっと塗るだけでもずいぶん残りそうな具合で、もちろんこんな臭気を発するシャッター幕をカメラ内部に組み込むのもよくない話でしょうが当座のこととして割り切ることにします。

分解ついでにこれまで掃除していなかった巻き上げノブ周りも掃除しました。

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緑の物体は固まってしまっ古いグリスでこれがスムーズな動作を妨げています。この緑の塊をベンジンで拭いさり、新しいグリスを薄く塗ります。これだけで巻き上げ動作が軽快になります。本家のバルナックライカとは言いませんが、手持ちのカメラの中でも巻き上げの感触が気持ちのいい一台になりました。

ソビエトカメラの悪評のかなりの部分は生産後に五、六十年経った機械式カメラとしてはごく当然なレベルとしての整備不良という一言で解決するのじゃないかという印象を持っています。

試写
シャッター幕が十分に乾いたところでもう一度組み立てて距離計を調整し何枚か試写します(冒頭の花壇もそれです)。距離計の調整の手順はバルナックライカのそれと同じですので割愛します(詳しい記事が色々出てきます)。

試写用に使ったフィルムは当時常用にしていて先頃廃版になった富士のSUPERIA X-TRA 400です。レンズはFed1標準の沈胴式レンズFed(Industar-10 L39マウント互換に調整済のもの)です。

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少々褪せたような感じに写るのはこの時代のレンズの共通点ですが、この時代のレンズはそもそもカラーで撮ることを前提にしていません。実際このレンズもモノクロ撮影用のイエローフィルターがおまけについてきました。

もうすこし別のカラーネガフィルムも試してみたいところだったのですが、このあと当時お願いしていたDPEが店舗での現像受付を終了したのを受けてモノクロでの自家現像に注力していくようになっていきましたので追求はしませんでした。

最終的にはこのFed(改)は専門の修理店に依頼してシャッター幕を張り替えていただくとともにオーバーホールをしていただき現在も手元で快調に動作しています。