書肆萬年床光画関係資料室

写真史や撮影技術、カメラ等について研究趣味上のメモ置き場

M3神話解体試論 作成用メモ(あるいは50年代写真文化史考に向けて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年現在のAPS(IX240)フィルム 横浜編

(注 2018.01.05)

この頁は2017.08当時のAPSを取り巻く状況をまとめた頁です。情勢はその後大きく変化してAPSを使うなら今しかない!」というぐらいの状況が出来しています。 APSフィルムが期限切れであることなどはこの記事でまとめた通りなので期限付きの状況ではありますが。取り急ぎ、サークル先進写真機構のK.I.Mさんが著書の頁を公開してくださっていますので、まずはこちらをごらんくださいませ。

 K.I.MさんのAPSカメラ本は横浜の「カメラはスズキ」横浜ジョイナス店での委託販売やご本人のブログから製本通販.comを通して購入可能です。大変な力作ですから是非手に取ってみられてください。APSに興味をもたれた貴方なら、間違いなく刺激的な作品です!

blog.livedoor.jp 

 

 

どうやら横浜方面で時空のゆがみが発生しているようです。

このところカメラ関連の自費出版等の取り扱いを広げられているカメラはスズキ 横浜ジョイナス店様で、先日のコミックマーケット92で発行された「APSフィルム一眼レフのすべて」(サークル先進写真機構)の販売が始まりました。 

C92で頒布された第一版には応援ペーパーを寄稿させていただきましたが、今回の第二版には巻末付録として「2017年現在にAPSカメラとAPS(IX240)フィルムでの撮影を楽しむためのTips」と題して4ページの原稿を掲載していただいています。 

内容は前回のこのブログの記事を第二版に合わせて再構成したものです(C92の初版付録のペーパーとは別内容です)。さらにカメラはスズキさんは期限切れAPSフィルムの取り扱いを始められたようで、いま気軽に銀塩APSフィルムで撮るなら、間違いなく世界で一番恵まれた環境が、この2017年の横浜に出来しました。

そこで紹介されているのがISO100のネガフィルムだったりしたので、私も含めた地方民の間に悲しみのさざ波が広がったのはご愛敬。

早速撮影された方もいらっしゃいます。露出補正のデータもあげてくださっているのがありがたいところです。

さらに、なんとカメラはスズキ 横浜ジョイナス店さんは、今後大量に取り扱う意志があられるとのこと。(海外ではまとめて冷蔵品を取り扱っている店舗もありますがそのあたりになるのでしょうか?)

すでに生産が終了して使用期限も切れたフィルム達ですから、どちらにしても限られた期間の楽しみになることは間違いないですが、2017年にもなって実店舗で楽しまれるなんてことが起きるのは、あとはジャンクカゴで朽ちていくだけであった捨て値のAPS機達にとっては朗報ではないでしょうか。 

この期間で少しでも、ホコリをかぶったカメラ達が往事の輝きを取り戻し、あなたにとっての思い出の一枚につながりますように。

なお、個人的にはMINOLTA Vectis S-1/S100を強くお勧めしたいです。マニュアルはサポートを引き継いでいるケンコー・トキナーからダウンロード可能です!

 ・ケンコー・トキナー コニカミノルタ製品アフターサービス

あと、ちょうどカメラはスズキさんにはサークルなんだかだるいさんの「ジャンクカメラでワイワイする本」が再入荷したところのようですが、これはジャンクカメラを使ってみるときに気をつけることと簡単なメンテナンスがよくまとまっているのでお勧めですよ!

 

APS(IX240)フィルムでの撮影についてちょっとしたまとめ 2017年版

(注 2018.01.05)

この頁は2017.08当時のAPSを取り巻く状況をまとめた頁です。情勢はその後大きく変化してAPSを使うなら今しかない!」というぐらいの状況が出来しています。 APSフィルムが期限切れであることなどはこの記事でまとめた通りなので期限付きの状況ではありますが。取り急ぎ、サークル先進写真機構のK.I.Mさんが著書の頁を公開してくださっていますので、まずはこちらをごらんくださいませ。

 K.I.MさんのAPSカメラ本は横浜の「カメラはスズキ」横浜ジョイナス店での委託販売やご本人のブログから製本通販.comを通して購入可能です。大変な力作ですから是非手に取ってみられてください。APSに興味をもたれた貴方なら、間違いなく刺激的な作品です!

blog.livedoor.jp 

 

C92新刊 サークル先進写真機構「APSフィルム一眼レフのすべて」勝手にサポートコーナー

C92がそろそろ終わろうとしています 参加者の皆様お疲れ様でした。

Twitterで知遇を得たK.I.Mさんが先進写真機構というサークルを立ち上げAPS一眼レフの全機種解説本と写真集を引っ提げて参加されていまして、そこに応援ペーパーを寄稿させていただきました。

重鎮というのはまったくの勘違いで、ペーパーを読んでいただいた方にはおわかりの通り、私自身が最近になってあらためてAPSカメラと出会い直し、当時はほとんど触れることのなかったAPS機にこんなにも興味深い機種と撮影体験があったのかと新鮮な気持ちで向かい合っている一人のアマチュアに過ぎません。

そして以下のような投稿が流れてくるあたり、多少なりとも再評価の流れがあるものと思われるのですが、それを手放しで喜ぶには少々気になる点があり、まとめておきたいと思った次第なのです。

 

  • お読みいただく前に 
  • APS(IX240)フィルムはすでに生産終了(2011年)から6年が経ち、全てのフィルムは有効期限を過ぎています。ブランドや保管状況にも左右されますが、すでに往時の性能を十全に発揮することは難しくなっていることをご承知おきください。
  • IX240フィルムの再生産や他のフォーマットのフィルムからの転用は今のところ不可能で、数年以内に全て撮影不能となるのが不可避な状況です。その前に、何かの縁でAPSカメラと出会うことになった皆さんがちょっと使ってみたいなと思ったときに、なるべく往時に近いパフォーマンスで試す手がかりになればと思います。
  • カメラと写真についての考えは様々です。よくわからないカメラで興味本位に撮ってみた不鮮明な結果が、自分にとって大事な一枚になることもあります。願わくはそういう機会につながりますように。

 

1.カメラ/レンズの入手性と考慮すべきポイント

APS規格のカメラ・フィルムが市販されたのは1996年からで、フィルムについては2011年に生産終了が発表されていますが、カメラの新機種については2000年代の早い時期に絶えています。また一眼レフにいたっては第一世代が後継機のないまま2000年にはディスコンになりつつあり、「APSフィルム一眼レフのすべて」で紹介されているカメラは現状で20年近くたっているプラカメばかりだということは知っておいていただければと思います。つまりメーカー保証はとっくに終わっていていつ壊れてもおかしくないということです。

しかし、APSが普及しきれなかったため、逆説的に35㎜機に比べて使い込まれておらず比較的状態が良いものが手に入りやすいのです。しかもフィルムがディスコンになったためジャンクコーナーの常連となっており、CONTAX Tixなどのごく一部の機種を除けば捨て値です。こういうの場合、1円・2円を争って時間を無駄にするのはとてももったいないので、ハード○フや都会のカメラ店のジャンクコーナーで適切な機種を見かけたら、お財布と相談して妥当な値段でさっさと拾ってくるのがよいだろうと思います。

ジャンクについてきにするべきポイントは、ファインダのカビ・曇り、ボディのひび、電池室の液漏れ(蓋周辺から緑の変色があらわれていないでしょうか)

一例として、以下のIX50はついこないだジャンクコーナーで拾ってきたものですが540円でした。いささか高めですね(笑) 

ジャンクコーナーで特に梱包などもなく、乱雑に置かれている中にありましたのが、電池を入れるとまったく問題なく動作しています。おそらくよほど(一見して明らかなヒビが入っている/電池室に液漏れがある など)のことがない限り撮影自体はできる状態だろうと思います。

レンズ交換式一眼レフとして見かけるのはおそらくMINOLTA(現 コニカミノルタ)のVectis S-1/S-100かCanon IXE/IX50が多く、NikonのPRONEA 600iがその次でぐっと下がってPRONEA Sが続くぐらいでしょうか。このあたりは店舗によってもずいぶん違うところです。

相場は数百円~3000円くらいではないかと思います。中古を探す際に気をつけるべきポイントは特に変わるものはありませんが、ざっくりポイントを書きますと以下のようになります。

*① MINOLTA Vectis シリーズ

  • 完全新規マウントのVマウントを採用しているためレンズも併せて入手する必要がありますが、現状ではミラーレス機に転用するようなマウントアダプター等も一般に入手できる形では存在しないためレンズも一部を除き捨て値です。レンズも含めて防滴のため、ズームを操作する際に空気の出入りがあって一瞬引っかかりを覚えることがありますが故障や油ぎれではないので安心してジャンク箱から拾っていいです。

*② CANON IX シリーズ

  • IXEのデザインは好きな人にはたまらないでしょう。専用レンズと一緒に見つかることは少ないですが、マウントはEFマウントを採用しているため、捨て値で売ってある標準/望遠レンズがそのまま使えます。

*③ Nikon PRONEAシリーズ

  •  専用レンズはありますが、Fマウントレンズがそのまま使えます。ただし、Fマウントのジャンクレンズは少々お高いことがあるので、そのあたりも考慮して探すといいでしょう。PRONEA Sについては周囲で動作不能になった個体の報告が増えている印象があり、またジャンク扱いで購入して一見電源が入ってもまともに動作しない、ということも続きましたので、内部のプラパーツや電装が寿命をむかえつつあるのではないかとにらんでいます。どうしても、というときは時間はかかってもきちんと動作保証が取れているものを探した方がよいでしょう。

ざっくりした印象ですが何らかの参考になれば。レンズ一体型一眼レフのOLYMPUS CenturionやFUJI EPiONについては先ほどの通常のジャンク基準での対応で大丈夫だと思います。

 

2.APSフィルム(IX240フィルム)の入手性について

さて、こちらが少々難しいフィルムの入手性です。現状ではヤフオクやメルカリ等のネットオークションでの出品を狙うのが現実的ですが、高騰しています。ここしばらくでも急激に相場が上がりました。半年前なら一本600円で高いな、と思っていたのが今では1000円前後です

これにはTwitter界隈で騒いでいた自身の言動も多少なりとも影響したところがあるのかと思わないでもないですが、逆にいえば相場が上がったからこそ次々出品が続いていて、まだまだデッドストックが眠っているのだなと今からは想像しがたい2011年ごろまでのフィルムの供給状況に思いをはせるところがあります。

以前であれば一本200円を切っていたというのが事実なのですが、これは考えようです。APS機とフィルムについては様々な事情であまり真正面からの評価がされてきませんでした。いま、あらためて多少なりとも評価がされ始めたからこそ相場が上がりつつあるととらえてみるのはどうでしょう。

当時投げ売りされていたものが、あとになって再評価され高騰するというのは音楽や絵画の世界でもよくあることです。少なくともゴッホの絵というわけではなくお小遣いの範疇で(なにせカメラとレンズが捨て値なので…)手に入るので、そこは面白い経験に投資するつもりで試すのが、安い出物を探して時間を消費するよりマシと考えるのもありだと思います。

ただ、精力的にフィルムカメラを扱っていらっしゃる店舗がデッドストックの取り扱いを始められるような気配がありますので、それを待つという選択肢もありでしょう。

なお、ハードオフのジャンクコーナーで単体108~324円で転がっていることはありますが、これは他の目的で回っているときにあったら儲けものぐらいのつもりでいくのが良いでしょう。また開封されたフィルムの保存状態はまったく期待できません。

 

3.選ぶべきAPSフィルム(IX240フィルム)の銘柄について

肝心の銘柄ですが、国内で手に入れられるのはフジのnexiaコニカのセンチュリア、コダックのAdvantixなどです。海外には他にもありますが、基本的にOEMと思われ、冷蔵品を謳う出品もありますが手を出すべきではありません。

そして2017年現在、なるべく十全にパフォーマンスを発揮させたいなら、選ぶべき銘柄にフジのnexiaしかありません。それもnexia 200がおすすめです。400も期限によってはありです。800はちょっとチャレンジングかもしれません。コダックコニカのものは、その粒子の荒れを楽しむなどの目的のない限りは積極的に選ぶべきではありません。

この点、写真についてはノイズや期限切れの描写を作品作りに活かすという分野もありえます(サークル「なんだかだるい」さんの『NO SELF CONTROL』はノイズを活かした誌面作りになっています)が、これはちょっと上級コースでしょう。

適切に管理された状態で保管されたフジのnexia 200は十年落ちでも大きな問題を感じさせません。適切でないとしても一段、二段の露出補正でかなり対処できます。以下、K.I.Mさんからの追加情報です。

この情報はフィルムの保管情報によって大きく左右されるものであることはお断りしなければなりませんが、このリストの範囲のフジ製フィルムであれば「まず撮ってみたい」「試してみたい」という用途なら実用になると考えてかまいません。

また、露出補正ができない機種でアンダーになったとしても、現在の一般的なパソコン・スマホであれば、現像後のスキャン画像を補正することである程度実用範囲を広げることもできます。このあたりは時が味方してくれるようになった数少ない例、といえるかもしれません。

こちらはカズさんとK.I.Mさんによる海外製のFnac(期限表記なし)によるものですが、きちんとした保管を謳うものでもなかなか厳しい写りです。(これを表現としてあえて狙うという技も、前述のようにありはします)

これはどこかでまとめないといけないなと思い当たりましたが、自動化の進んだAPSのコンパクトカメラ(というより自動化の進んだ当時のあるセグメント向けのフィルムコンパクト全般の傾向かもしれませんが)には一部を除いて露出補正の手段がない(そのものでなくともフィルム感度等で代用可能な機能も含めて)ものが多いのです。そのため、なるべく新しめのフィルムを使うのがおすすめと言うことになりますが、フィルムの入手についてどうしても限界がありますので、とりあえず試すのであったら出てきた画像を楽しむぐらいの方がかえって面白い結果と出会える(それはAPSフィルムの本来のパフォーマンスではないでしょうけれども)のではないかと思います。

以下は私の試写です。nexia400によるものが中心ですが、私の用途では充分に写っていると言っていいと思いますが、皆さんはいかが思われますか?

 

4.現像の対応状況とスキャンデータ(フジフォトCD)利用のすすめ

さて、そんな2011年に生産終了したAPS(IX240)フィルムに興味が沸いたところで、一体現像をどうしたらよいの?という疑問があると思いますが、実はたいていのDPEではまだAPSフィルムの現像ができます上記の撮影もすべて地元のDPEに持ち込んだものです。

実は、いまDPEに入っているフジフィルムの現像・プリント機器(デジタルミニラボシステム)であるところのフロンティアシリーズは、APSのころから更新されていません。フィルムの衰退ぶりというか、そもそもAPS規格の登場についての生臭い話になってきますが、そのあたりは触れないことにして、おかげさまでいまでも35㎜フィルムを注文するのとまったく同じ感覚でAPSフィルムの現像やスキャンを依頼することができます

ただ、お店によってはAPSの現像に必要な機器を処分している場合もあるのでそのときは別のラボに転送されることになり、ちょっと時間がかかるかもしれません(店舗で現像していない場合のモノクロや120フィルムと一緒です)。

現像、プリントとも料金は135判と変わらない場合が大半だと思います。おそらく現像が600円前後、それとL版同時プリントで合わせて1800円ぐらいではないでしょうか。サービスデーなどでもっと安い場合ものあるでしょう。

また、現像の際お使いの方も多いと思いますが、「フジカラーCD」といってフィルムをスキャンしたデジタルデータをCDに焼いてもらえるサービスにたいていのお店は対応してるはずです。

フジカラーCD | 写真のネットプリントサービスなら【富士フイルム】

そして最近はお店独自にその写真データをお持ちのスマホ等のデジタルデバイスに転送してくれるサービスを行っている場合もあります。SNSへの投稿を考えれば一番使いやすい方法です。

APSフィルムのスキャンについては項を改めたいと思いますが、個人で行うには少々ハードルが高くなりつつあります。

国内のメーカーが出していたフィルムスキャナーにはAPS用のアダプタをオプションで使用できるものがありましたが、現在では全て製造終了しています。そのため中古の流通を探すしかありませんが、とくに後期の製品について上級機ほど高騰している現状があります。

また、ドライバーのアップデートが行われていないことから、現在のWindows 10やMac OSで使用することは難しくなっており、互換ドライバの使用や設定ファイルの書き換え、またはスタンドアローンでの専用環境の構築など、一定以上のスキルがないと利用することが難しい状況です。

また35mmや中判フィルムのスキャンついては海外製品ではまだ専用機が更新されており、よほどAPSでの撮影に本腰を入れない限りは個人でのスキャンは手を出さなくてよい領域です。

ちょっと余談になりますが、少し前に「フジのフォトCDのデータサイズが小さすぎておかしい!」というコメントが流れてきたことがあります。

たしかにフジのフォトCDは決して高解像度ではありません。もちろん製品が更新されていないから低解像度なのだというのは言えますが、しかし、ずっと写真と付き合ってきたフジという大メーカーのノウハウの蓄積はもっと素直に頼ってよいものです。それで充分市井のセミプロやハイアマの要求に応えて来たという事実をまずは信頼していいのではないでしょうか。

私たちはすでに画素数だけがてんこ盛りで実際はノイズの嵐で酷い画質のコンパクトデジタル末期の悪夢で十分に思い知らされたはずです。フォトCDのデータを元に、家庭用プリンタで適切に設定して出力したとき、え、こんなに引き延ばせるの?!とびっくりすることになると思いますよ。

前掲の写真は全てフジのフォトCDにしてもらったデータを縮小したものです。

 

まとめ

ざっくりしたまとめです。APSのなにがAdvanceであったのかとかそのあたりはまた別の機会に何とかするとして、とりあえず2017年8月現在に興味を持たれた皆様が挑戦してみようと思われたときに少しでも参考になれば幸いです。

 

2017.08.13 公開

2017.08.14 追記 (機種・現像・スキャナの対応など)

2017.08.14 追記 (フィルムの期限・撮影結果など)

ドフジャンク棚にみる普及帯コンパクト史 備忘録

最近は(全盛期に比べれば誤差の範囲とはいえ)多少なりともフィルムカメラでの撮影が盛り上がっているようで、なかでもこれまでほとんど見向きされてこなかった普及帯のプラ製コンパクトカメラが評価されているらしいのが面白いところです。

残念ながら地方在住だとそのあたりのコンパクト機にはほとんど動きがありませんが、一部実用一眼レフ(Nikon FEなど)に相場の上昇が見られるので多少なりとも盛り上がりは伝わってきているようです。

さて、巡回している近隣市町村のハード○フでも銀塩コンパクトの、それも普及帯のプラカメは投げ売りでもほとんど動きがないままですが、ジャンク棚を定点観測しているとここ50年ぐらいの普及帯コンパクトの発展史と各家庭での受容史がなんとなく浮かび上がって来なくもないので、ちょっとした整理を。

あくまで巡回しているハードオフのジャンク棚で実際に見かけた機種基準です。(一部そうでないのもあります。特に90年代後半になってくるとデジカメへの移行が始まるのでこの時期の銀塩カメラはあまりジャンク棚に登場しません。そのかわり、初期のデジカメが大量に並んでいるわけです)

(2017/07/24版)

1.ノブ巻上+目測またはRF + 単焦点+金属製

2.ノブ→レバー(親指)巻上
3.自動露出(AE)

  • OLYMPUS AUTO-EYE(1960)
  • Canonet QL 17(1965)
  • Yashica ELECTRO 35(1966)

4. フラッシュ内蔵+この辺でプラ素材導入開始

5.カプセル型のレンズバリア機登場

6.自動合焦(AF)

7.自動巻上げ(オートワインダー)内蔵

  • Canon AF35M (オートボーイ)(1979)
  • Yashica AUTO FOCUS MOTOR(1981)

8.日付同時写し込み機構搭載

  • Canon Autoboy2 QD(1983)

9.複数焦点(標準/望遠)レンズ搭載

  • Canon Autoboy TELE QD(1986)

10.標準ズーム(2倍程度/パワーズーム)レンズ搭載

  • Canon Autoboy TELE QD(1986)

11.このあたりでレンズ銘とF値がレンズ周りから消滅

 ( ブリッジカメラ登場 → 別の世界線へ )

 (「写ルンです」登場(1986) → 別項へ)

12.簡易パノラマ撮影モード搭載機登場

13.撮影モード搭載機登場

 ( APS機登場 → 別項へ)

 ( 高級コンパクト機登場 → 別の世界線へ)

 14.超望遠ズームレンズ搭載機登場

一般家庭へのコンパクト受容史を考えると本当は110カメラ、ハーフサイズカメラとディスクカメラあたりも目を配らないといけないですが、あくまで地方のハードオフジャンク棚で取ったメモってことでご容赦ください。(その割にAPSは入っているじゃないかと言われるとあれですが...)

ちょっと腰を据えてコンパクト史をまとめようとしても、現状ではなかなか資料が難しいのです。OEM関係とかになると完全にお手上げです。

これらの機種については次のサイト以上にまとまった資料は有りませんのでご紹介しておきます。

penguin-19's COMPACT CAMERA

コンパクトカメラ専門ページ penguin-19's COMPACT CAMERA

 

都市伝説の結末 / OM(AF)マウントレンズのOM(MF)機への装着について

さて昨晩、銀塩AFカメラについてそれなりに有名な都市伝説がデマであると確定したのでまとめておきたいと思います。

起点は佐藤さん(@sigeosato  )のこの発言。

このOMAF用レンズをMF機に付けると外れない」というネタ、今日現在(2017/07/20)で、Wikipedia(ja)のOLYMPUS OMシリーズの項にも記述があります。

オリンパスOMシステム - Wikipedia

現在はマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼(OM-D)として展開しているOLYMPUSのOMシリーズですが、元々銀塩MF一眼レフの名機として著名で、特に一桁機は今でも人気が高いのは言うまでもないことでしょう。

銀塩OM一桁機については「プリズムがモルトの浸食を受けて劣化する」というのがよく知られた持病としてあり、これは事実です。またその解決策として、同じOMシリーズではあるものの一桁機より人気が薄く安価な二桁機であるOM10からプリズムを移植するという手が紹介されていたりしますが、ジャンクからならともかく実働個体からプリズムを抜き取るのには嫌悪を示すユーザーも多いので、注意が必要でしょう。

さて、この銀塩MFカメラの歴史に燦然と輝くOMシリーズですが、AF時代に突入したときにOM707という機種を登場させています。このOM707は新マウントではなくOMマウントのままでAF化を果たしていますが、このとき一つの変更をしたことがよく知られていて、それが今回の都市伝説の勘所です。

実はMF機のOMシリーズではレンズ取り外し用のボタンがレンズ後部にあるというのが一つの特徴となっていますが、マウントをAF対応させる際、このレンズ取り外し用ボタンを他メーカーの機種でも一般的なボディのマウント側面に移動しています。その結果、OM707とともに登場したAF対応のOMレンズからはMF機のようなレンズ取り外しボタンはなくなっています。

その結果、以下のような論理展開が成立します。

  • OMAFレンズをOMAF機(OM707)につけると、当然ボディ側取り外しボタンで取り外せる
  • OMMFレンズをOMAF機につけても、レンズ側の取り外し機構で取り外すせる
  • そして、OMAFレンズをOMMF機につけると、レンズ取り外し機構がない!つまり取り外しできなくなってしまう!

もっともらしい話ではあります。ですが、実はこんな問題に直面する例は他にいくらでもあり、メーカーが想定していないはずがない話なのです。例えば佐藤さんのこの発言に集約されるように。

 TLに実際にOM三桁機を使われているフリスク( @FRlSK1  )さんと日本光学くん( @mouko281985  )さんの反証が上がってきました。

もう充分でしょう。

この都市伝説は結構有名で、いま確認する余裕はないですがひょっとしたらなんらかの活字化もされていたかもしれないぐらい広まっています。こんな実機をちょっと確認すればわかる話がなぜここまで人口に膾炙することになってしまったのかと言えば、またフリスクさんの発言で申し訳ないですが、一つにはこういうことがいえるでしょう。

そう、OMAF機は今"希少"なのです。ですが、売れなかったか...と言えばそんなことはないはずです。メーカーが期待したほどであるかどうかは別として流通している中古の数を見ればそれなりに売れたのだろうというのは分かります。少なくともSIGMAのSAマウント機よりはよほど手に入れやすいでしょう。

希少だからこんなデマがはびこったのか?もう一歩踏み込む必要があると考えます。つまりはこういうことです。

嗤う」という言葉が重いです。そう、OM三桁機(AF機のOM707とパワーフォーカス機のOM101)は失敗作であるという評価が定着しています。

傑作機とされるMF機OMシリーズに対して、AF化の波に乗り遅れた中途半端な駄作機として世に出、栄光あるOMシリーズの命脈を絶った不肖の子、見れば栄光の"クラシックカメラ"の殿堂入りしたMF機の金属カメラとしての質感と重厚さに比べて、なんと三桁機の安っぽいプラカメぶりよ...自分で書いていて気が重くなりますが、AF機のOMシリーズについてこれくらいのことは思われているだろうという印象があります。

「定番ネタ」という言葉が示すように、この"失敗作"のイメージに対してこの都市伝説はあまりにピッタリはまりすぎていたのでしょう。本当かどうかではなく、"イメージぴったり"だったことがこの伝説を支えたのではないかと思われます。

実際、サードパーティのOMAFレンズをMF機につけた場合はついてしまうことがあるようで、その場合は本当に分解しなければ取り外せない可能性があり、それがこの都市伝説の萌芽である可能性はなきにしもあらずです。しかし、それは間違いなく保証外の行為であって、サードパーティにもメーカーにも責任はないことです。

OM三桁機が本当に"失敗作"だったのか。市場は当時評価しなかったにしろ、今の視点からとらえ返せばまた別の視点から評価されるところが無いか。そもそも、本当に使えないのか。OMのAF機に高まった当時の期待とメーカーの出してきたものとの落差はあったのかもしれませんが、今のユーザーがそれにとらわれる必要も無いでしょう。

実際に使われている道具は常に美しいと思います。私の手元にもOM101のボディはあるのですが、OMAFレンズが手に入らないまま何年塩漬けにしてしまっていることやら(汗)

1960-70年代のプロダクトデザインが再評価されているように、そろそろ80年代のデザインが再評価される時が来ないかと思っているのです。

最近、それが全盛期に比すれば誤差の範囲とはいえフィルムカメラが盛り上がっている様子があり、しかも、ごく一般的な普及帯コンパクトカメラだ!という面白さのある現在、普及帯プラ製AF一眼レフを積極的に推し進める当ブログとしても、過去の情報の焼き直しだけではなく、改めて2017年現在の情報として記事を書いていきたいと、気を引き締めた次第なのでした。

ま、次の更新がいつになるかは神のみぞ知る、というところなのですが...(汗)

私が愛用しているFed / Zorkiなどもそうなんですが、やはり色々デマがあります。これはカメラに限らず車やバイク等でもそうでしょうが、つまりはなにがしかの"伝説"が生まれる余地のあるジャンルはすべからくそういうものなのかも知れませんね。

オリンパスPEN&OMのすべて (Gakken Camera Mook)

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