書肆萬年床 光画資料室

写真史や撮影行為にまつわるあれこれ、またはカメラ等についてよしなしごとを放り込む納戸

「キング 『カメラセット』」簡易レポート

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暗室不要・白昼現像を特徴とする戦前の子供向けカメラ=円カメラは以前レポートした東郷堂によるものが代表的ですが、東郷堂もその始祖というわけではなく、また実際にはいくつもの会社から同様の円カメラが発売されていました。そのうちの一つ「キング『カメラセット』」について簡易的なレポートをしたいと思います。

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外箱はこのような感じでサイズ感からも子供向けの"おもちゃ"という雰囲気です。箱の表に"AIKATSU & CO. TOKYO"とあり手がかりとしたいところですが、某子供向けゲームシリーズに検索エンジンでの検索結果は占拠されており今のところよい結果にたどり着けていません。「キング」ブランドの「カメラセット」なのでしょうが、カメラの正式な名前が何であるか、今のところ手がかりがありません。

このボール紙製の中にはカメラ本体紙製の撮り枠に入った専用フィルム数枚専用印画紙焼き付け機専用白昼現像液/定着液(粉末)が入っています。子供向けのおもちゃと侮るなかれ、この一箱で撮影から現像・焼き付け・定着まで可能なセットとなっています。

箱を開けると中はこの通り。残念ながら定着用のハイポのアンプルが割れて中に散らばってしまっていますが、印画紙や現像液は未使用のようで、以前の所有者はあまり使わなかったのかも知れません。

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ちなみに印画紙(キング印画紙)の袋の隣に見える「ガラスと窓が切り抜かれた紙のセット」は特に説明はないものの焼付機(!)かと思われます。この紙に印画紙→フィルム→ガラスと置き、穴がガラス上に来るようにくるみ電球に向ければ焼付ができるという訳です。同クラスの東郷堂のそれと比較しても究極的にシンプルなものですが、これでも実用は果たせたはずです。

さて、カメラ本体に移ります(写真は冒頭の物と同じ)。フォールディングカメラの体裁をとっており、本体の蓋を開けてレンズ部分を引き出すとこのようになります。

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一見、立派な蛇腹カメラに見えますが、前回紹介した東郷堂のナイス號と比較しても圧倒的にチャチな作りです。サイズはわずかにナイス號より大きいのですが、重量はこちらの方が明らかに軽く、有り体に言ってブリキ細工のようです。ナイス號が「カメラ」ならこちらはかなり「カメラのおもちゃ」寄りの作りです。

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シャッターはレンズ向かって左側面にあり「バルブのみ」となります。このつまみを下げればシャッターが開き、離せば閉じます。東郷堂のナイス號よりここでもいっそうの単純化が見られますが、フィルムの感度の非常に低い当時のことですから、これでも用をなすのです。

レンズがどのようなものかは手がかりはありませんが「単玉のなにか」でしょう。ナイス號の金属部品は割としっかりと加工されたものであったのに対して、こちらは先にも述べたように金属板を切ったり曲げたりしたブリキ細工の風合いです。

東郷堂のナイス號よりはさらに一段安く、おもちゃ寄りの流通をした機種と思われます。しかし、ナイス號は備えていなかった距離指標を備えている点や、またフィルム出し入れ口に遮光用の植毛をしている点など、その値段の中ではまじめに作られたカメラとはといえるかもしれません。

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白昼現像を用いた子供向けの円カメラについては東郷堂についてさえ記録は少なく、このキングカメラ(正確には「キング」ブランドの「カメラセット」というべきか?)や、また私の手元には「シルバーカメラ」という白昼現像を用いるカメラのカタログや解説書もあるのですが、詳細がそれぞれの現物以上にはないという実情です。

私自身がこの辺りを追求するのは現状では非常に難しいのですが、どなたかが研究なされていて必要であるというのであれば史料の提供はさせていただきたいと思いますのでご一報いただければと思います。