日本写真界の現状 ②(フォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」(1958.6)所収)
先だって1958年6月の写真誌概況(フォトアート臨時増刊「質問に答える写真百科」所収)という記事を投稿しましたが、これはこの増刊の中の「写真界知識編」(p371~)という特集の一部でした。
この特集では当時の日本写真界、そして世界の写真家を総合的に捉えようというものでもちろん偏りはあるのですが当時の認識として興味深いので一部を紹介してみようと思います(無署名記事により 著作権保護期間は満了しています)。
(特集表紙)
写真界知識編
写真界は年ごとに生長しています。そして写真が応用される範囲も益々広くなりつつあります。そうした見地から少くとも写真をやる人にとって、現在の日本写真界をはじめ世界の写真界の事情を知っておくことは無駄ではないと思います。どんな写真家がいるか、ジャーナリズムはどうなっているか、アマチュアのカメラクラブにはどんなものがあるか、といった点をくわしくのべてみました。
日本写真界の現状
日本の写真界は一体どんな組織になっているのでしょうか
一口に日本写真界といっても、その規模は大きく説明しにくいようです。
日本の写真界を大別しますと、カメラメーカーや感光材料メーカーを本源とする、一連の生産販売組識と、われわれアマチュアに関係のある写真製作部門の二つとなります。ですから前者を普通、写真工業部門とよんでおり本邦においては小売業者の末端にいたるまで、いろいろな組織や団体があってその活動を展開、また海外における活動としては、いわゆる輸出の振興に大きな役割を果たしているわけです。
ですからこういった写真工業の組織は、直接には私達に関係が稀薄であるといっても、けっしていいすぎではないようです。それよりも、私達写真を製作する者にとっては、新聞や雑誌など、いわゆるマスコミュニケーションの世界で活躍している写真家を形成している姿を知ることの方が、より興味があり、より必要だと思うのです。
こういった観点から日本の写真界をよくながめてみましょう。
プロとアマということ
まず写真家をよぶときに、よくあれはプロで、これはアマチュアだとかよんでいます。それでは一体プロフェッョナルとアマチュアの区別は、なにを基準としているかという疑問点にぶつかるでしょう。
字句の上からだけでいいますと、プロとは写真製作を業としている人、アマとはそれ外の人ということにはなるのですが、これだけでは、おそらく疑問点を解決したことにはなりますまい。
結論から先にいいますと、この区分は実にあいまいであります。ただ一般にプロというときには、主として街の営業写真館をのぞいた、雑誌や各種の宣伝物など、そういったジャーナリズムで活躍している写真家を指すようです。ですから営業写真家を含めた場合もその人の活動半径で、アマとプロの区別ができるようです。
日本写真家協会
ところで雑誌や新聞などジャーナリズムの世界で活躍している写真家の組識している団体に「日本写真家協会」(JPS)というのがあります。会員百十数名で最近まで木村伊兵衛氏が会長、渡辺義雄氏が副会長でしたが木村氏は写真界につくした功績をたたえられ顧問格となり、会長に渡辺義雄氏、副会長に松島進氏が就任したのはごく最近です。この団体は営利団体ではありませんから、共同の営利を目的とした事業は行ないませんが、共同の作品活動や写真振興のための事業をつけているわけです。具体的には展覧会や撮影会などがあげられます。
「集団フォト」と「ギネ・グルッペ」
この他にプロの形成している団体に、主として報道写真家を中軸とする「集団フォト」と、いわゆる女性写真家と称して、女性をモデルとする写真家のグループ「ギネ・グルッぺ」とがあります。この二つのグループは特異な存在として注目されております。この他にも団体がありますが、ここでは省略します。